
「宝クジが当たれば」リチャード同点3号3ランなどで5点差を逆転した巨人のポテンシャルと伊原のスペシャル救援起用が裏目に出た阪神の“余裕”という名の危険な隙
巨人が21日、東京ドームでの阪神戦で5点差をひっくり返しての6-5の逆転サヨナラ勝利で連敗をストップした。小幡竜平(24)に2打席連続本塁打を許すなど5点のリードを奪われたが、5回にシーズン途中にソフトバンクからトレード移籍した砂川リチャード(26)の同点3ランなどで一気に5点を奪って追いつき、9回二死満塁の場面で伊原陵人(24)から吉川尚輝(30)がセンター前へサヨナラ打を放った。首位阪神と3位巨人のゲーム差は10あるが、藤川阪神は隙を見せ、阿部巨人は底知れぬポテンシャルを示した。
バットを短く持って三振かホームランか
「ほんとね。意地を見せてくれました」
中継局のインタビュー。5点差をひっくり返してのサヨナラ劇に阿部監督の顔は上気していた。
7回だ。先頭の佐々木が打席に入ると、ライトスタンドから、本来であれば、得点圏に走者が進んだ時にだけ使われるチャンステーマが流れた。奮起を促す異例の応援。東京ドームのG党のストレスは爆発寸前だったのかもしれない。
初回にいきなり先発の井上がバント処理で一塁へ悪送球するというミス。そこは失点につながらなかったが、2回に小幡に2試合連続となる一発を浴び、さらに3回に一死一塁から小幡に2打席連続の2ランを許した。5回には通算1000本安打を達成して気をよくしていた大山にまでダメ押しの5号2ランをレフトスタンドに運ばれ0-5。伝統のGT戦の初戦に自力Vが消滅し、第2戦で対阪神のシーズン負け越しが決まっていたチームがまたしても敗戦濃厚だった。
だが、伊藤将の前に6回まで2安打無得点に抑えられていた打線がその応援団からの“喝”で目が覚めた。佐々木のレフト線二塁打を皮切りに吉川、増田陸の3連打で1点を返し、なお無死一、三塁で泉口の一塁正面のゴロをバックホームした大山の送球がジャンプした坂本のミットをかすめてバックネットへ転がって2点目。一死一、三塁となって代わった2番手のネルソンから、6月12日のソフトバンク戦以来、1か月ぶりに「7番・三塁」でスタメンに抜擢されたリチャードが大仕事をやってのける。カウント2-0からの3球目のファウルが自打球となり、左足に当たり、バッターボックスでひっくり返って悶絶したが、そのまま歯を食いしばった。しかし、続くチェンジアップにバットを空を切り追い込まれる。
「追い込まれたので、ゲッツーも打ちたくなかった。ちょっとバットを短く持って、三振か、ホームランという感じでいきました」
リチャードはグリップの間に数ミリ隙間を作って持っていた。。
5球目のチェンジアップはその前の1球の比べて落ちなかった。リチャードは泳ぎながらもバットに乗せた。打球は左中間へグングン伸びる。
「打った瞬間、声援、歓声がすごかったんでその振動でボールも伸びたかな」
移籍3本目が価値ある同点3ラン。
「うわーやったなぁ、やっちゃったなぁって感じでした」
リチャードは雄叫びをあげ、右手を突き上げ手を叩きながらダイヤモンドを1周した。
「リチャードのホームランはとても大きかった」と称賛した阿部監督が起用の意図をこう説明した。
「なかなかホームランが出ない打線なので冗談で“宝クジが当たったら”って言っていたけど、ああやって当たったらホームランできる力を持っているんで起用してみた」