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オリックスの宗が攻守にわたるミスを帳消しにするサヨナラヒット。首位のソフトバンクを3タテした(資料写真)
オリックスの宗が攻守にわたるミスを帳消しにするサヨナラヒット。首位のソフトバンクを3タテした(資料写真)

ゲーム差「0」で大混戦のパ…ソフトバンクはなぜ首位攻防戦でオリックスに3タテを許したのか

 

オリックスが19日、京セラドーム大阪で行われた首位ソフトバンクとの延長10回にもつれこむ4時間47分の激闘を6-5のサヨナラで制して、ついにゲーム差「0」tとした。ソフトバンクは、この首位攻防戦で3連敗。直接対決を5試合残すロッテが日ハムに敗れたため、優勝マジック「9」は消滅しなかったが、勝率でオリックスをわずか1厘上回っているだけで、パ・リーグの優勝争いは再び大混戦となった。

守護神モイネロが吉田正に同点適時打許す…敬遠策では?

 ソフトバンクは必勝パターンに入っていた。

 先発の東浜が初回にオリックスの吉田正に先制2ランを許し、3回にも2点を失ってKO。序盤に4点差をつけられ劣勢だったが、オリックスのミスにもつけこみ、6回についに逆転。5-4の1点リードで9回のマウンドには、防御率0.77の守護神モイネロを送り込んだ。だが、オリックスベンチは、首位攻防戦3タテをあきらめていなかった。

 中嶋監督は「ベンチも誰一人、あきらめていませんでしたし、絶対にひっくり返すという気持ちでいましたので、非常にいい感じでしたね」と振り返る。

 モイネロは、先頭の若月を歩かせ、続く福田に左前打を浴び、無死一、二塁のピンチを招く。だが宗のキャッチャー前に転がったバントを強肩の甲斐が三塁で封殺。続く中川を三振に斬って取り、ツーアウトまでこぎつけた。  あと1人。打席には、この日、先制2ラン、追撃タイムリーで3打点と勢いに乗る吉田正である。ちなみに、この3連戦の打率は4割を超えていた。

 モイネロは甲斐の肩を抱くようにしてマウンドへ戻り、そこに輪ができた。次打者は、この日、4打数2三振でノーヒットの頓宮である。

 勝負か、それとも敬遠か。モイネロー甲斐バッテリーが選んだのは勝負だった。

 その初球。甲斐は外角へミットを構えていた。だが、スライダーが甘く入った。吉田正は見逃してくれない。土壇場で同点タイムリーがライト前に弾き返された。台風にもかかわらず足を運んだファンの熱気が充満していた京セラドームが揺れる。モイネロの救援失敗は、実に6月18日の楽天戦以来、3か月ぶりだった。

「しびれました。ちょっと重苦しい雰囲気の中、なんとか最後、守護神から塁に出てつないでくれたので、ほんとにいいところに飛んでくれて良かった」とは、選手会長の吉田正である。

 チームOBでソフトバンクの野球に詳しい評論家の池田親興氏は「結果論ではなく吉田正は歩かせるべきだった」とベンチの采配ミスを指摘した。

「ベンチの指示か、あるいはバッテリーに任せた判断なのかはわからないが、たとえサヨナラの走者を二塁に置くことになり満塁にしても、この3連戦でキーマンだった吉田との勝負は慎重にいくべきだったと思う。次の頓宮に代打が出たとしても切り札的な打者は残っていなかった。左対左だが敬遠でよかったのではないか。そして、もし勝負であるならマウンドで攻め方を整理しておくべきだった。甲斐は、外のボール球を要求していて、制球ミスではあるが、制球ミスが起こる確率の高い球種の選択だったと思う」

 そして延長10回裏に10人目のレイのバント処理のミスなどもあり二死満塁としてから「良くも悪くも今日は僕の日だなと思って打席に立った」という宗に前進守備の間をゴロでセンターへ抜けるサヨナラヒットを打たれて4時間47分に及ぶ激闘に決着がついた。

  宗はベンチに戻り泣いていた。

 弱冠26歳だが、「なんかちょっと年齢を経るにつれて泣きやすくなってきてて」と言う。

 4回に無死一、三塁で柳田の三塁へのゴロをホームへ悪送球。タイミング的には、落ち着いてプレーすれば十分にアウトだったが、雑なランニングスローで送球がワンバウンドとなり、走者の生還を許し、さらにピンチを広げた。そして9回のバントミス。この大事な試合を落としていれば、責任を一身に負わねばならなかった。涙の理由もよくわかる。

 

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