
相次ぐリング事故のボクシング界の危機にプロとアマが歴史的握手!JBCと日本ボクシング連盟が合同医事委員会を開催…「競技人口の低下につながる事態は避けなければ」
プロボクシングを統括するJBC(日本ボクシングコミッション)とアマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟が22日、両組織から専門医師が出席して緊急の合同医事委員会を開いた。プロでは同日興行で2人が亡くなる痛ましい事故が発生、アマでも練習中に開頭手術を受ける事例が起きたため、両者が危機的な状況を打開するために互いに歩み寄ったもの。安全管理は、アマ側の方が進んでおり、事故が起きた場合の病院の受け入れネットワークの構築やレフェリングなどの改善策をアマ側が提案した。また今後合同医事委員会を定例化することも決定した。
歴史的な握手だ。ボクシング界も野球界と同じく選手の引き抜きを巡って長年プロアマの間に互いを相容れない“溝”があった。だが、相次ぐリング禍の危機にプロアマが歩み寄り、合同医事委員会が開かれた。
プロ側のJBCからは萩原実コミッショナー、安河内剛本部事務局長と、3人のコミッションドクター、アマ側からは、仲間達也会長と、11人の医事メンバーの医師が参加してオンラインを交え情報交換を行った。今回の合同協議は8月9日にアマ側が呼びかけて実現した。仲間会長がその理由をこう説明した。
「アマ出身の選手が事故となり痛ましい。アマの選手の多くは最終的にプロへいきたいと考えている。多くのボクサーだけでなく(ボクサーを)志している子供たちも、この状況であれば親がボクシングをさせることが難しい。アマで五輪を目指し、その先にプロがあるが、“結構亡くなっています”となり(ボクシングへの)入口が閉ざされて、競技人口の低下につながってしまうことは避けるべき。安全管理、予防は我々はうるさく言っている。情報を共有して、お互いに安全面を向上させ、総合理解を深めて協力していくことができると思った」
一方のJBCの安河内事務局長は「過去には、プロアマの垣根を超えて、こういったことができなかった。仲間会長の人柄のおかげ。自分にとっても気づきの多い会議だった。いくつもの重要なナレッジを共有させていただいた」と、歴史的なプロアマの協力体制がスタートしたことに感激していた。
プロ側は2日の興行で、浦川大将さんと神足茂利さんの2人が亡くなる事故が起きた。日本プロボクシング協会(以下協会)は20日に緊急理事会を開き「2年半で6人が開頭手術を受けた」ことを明かした。
2023年12月の試合で亡くなった穴口一輝さん、5月のIBF世界ミニマム級タイトルマッチ後に意識を失って開頭手術、未だ意識が戻らない重岡銀次朗(ワタナベ)に加え、京都のジムでのスパーリング中の事故で一人が死亡、都内のジムでも同じくスパーリングの事故で一人が意識を失い、開頭手術を受けて今も入院中だという。
一方のアマ側も、この日、今月8日にアマチュア登録の39歳の男性選手が都内のプロジムでのスパーリング後にジム内で意識不明となり「右急性硬膜下血腫」と診断されて開頭手術を受けていたことを発表した。連盟によると、この39歳の選手は2014年を最後に10年以上試合に出場していなかったが、社会人選手権への出場を目指して7月から本格的な強度をあげた練習に入り、8月6日に1分30秒のマスや軽いスパーリングを5ラウンド消化した。特段異常も見られず「大丈夫だ」となり、8日にスパーリングを3分3ラウンドを行った。4ラウンドの予定を「疲れたから」と3ラウンドで切り上げた。ヘッドギアを装着し、大きいグローブを使用、ダウンシーンも激しくダメージを受けるシーンもなかったという。
ジム内で休んでいたところ意識が悪化。千葉県内の病院に救急搬送され、右急性硬膜下血腫との診断で開頭手術を受けた。現在もICUにいて意識は戻っていない。
この選手は2008年にスパーリングで小さな硬膜下血腫を発症する既往症があったという。日本連盟に過去の詳細な事故データは残っていないが、試合では2022年に硬膜下血腫、2019年に開頭手術を受けた例があり、もっと以前には死亡例もあるという。同連盟は、再発防止のための35歳以上の選手、引退から5年以上経過して復帰する選手のCTまたはMRI検査を行うことを決定した。
また脳震盪を起こした選手の復帰プログラムについて改めて周知を徹底する。プロ側よりも対応、決定にスピード感がある。