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阪神の育成3位の新人早川太貴が横浜DeNA戦でプロ初先発初勝利
阪神の育成3位の新人早川太貴が横浜DeNA戦でプロ初先発初勝利

83年ぶりに阪神の新背番号「31」伝説の始まりか?!育成出身の早川太貴がプロ初先発初勝利…平均球速143キロで横浜DeNA打線を“錯覚の罠”にはめた“令和のマサカリ投法”

 阪神の育成ドラフト3位の早川太貴(25)が27日、横浜スタジアムでの横浜DeNA戦にプロ初先発、5回2安打無失点の好投で初勝利を手にした。阪神の育成出身ルーキーで先発での勝ち星は初。早川は2点のリードをもらった4回には足の違和感でベンチへ下がり治療するピンチもあったが続投して5回を投げ切った。今年、野球殿堂入りした掛布雅之氏の背番号「31」を背負った投手登録選手としては初めての勝利となった。

 4回に足がつるピンチも

 

 ファウルラインの手前で9回を締めた守護神の岩崎を待ち受けた。岩崎が記念すべきウイニングボールを早川に手渡して握手。その瞬間、育成出身ルーキーの初々しい笑みが弾けた。
 もちろんヒーローに指名されたのは早川。
「凄くうれしいです。試合前は凄く緊張したんですけど、マウンドに立ってからは、落ち着いてはいないですけど、いつも通りに投げられたのかなと思います」
 プロ初先発初勝利。
 5回を投げて、打たれたヒットは筒香のレフト前ヒットと、石上のレフトオーバー二塁打の2本だけ。2点のリードをもらった4回にその筒香にヒットを打たれた後に右足がつりかけて治療のため一度ベンチへ下がったが、マウンドを降りなかった。試合前から緊張もあってユニホームの色が変色するほどの大量の汗。脱水で足がつるのも仕方なかったのかもしれないが、早川は「大丈夫です」を繰り返して、マウンドに戻ると、オースティン、佐野、山本を三者凡退。5回には、一死から石上に二塁打に打たれて、二死三塁となったが、1番打者の蝦名にインハイに抜けた逆球の143キロのストレートを振らせて、無失点を守り、鉄壁の救援陣にバトンを渡した。
 早川は、国公立大である小樽商科大出身で北広島市役所に勤務して軟式野球をしていたという異色のキャリア。昨季からファームに新規参入したくふうハヤテで実績を残して育成ドラフト3位で指名された。
 ファームで6勝1敗の成績を残して支配下登録されたのが、7月13日。16日の中日戦で中継ぎで出番をもらうが、ボークを犯すなどして1失点、すぐにファームに逆戻りとなった。だが、再び4試合で14イニング2失点と、実績を積み重ねて、今度は先発チャンスをもらった。
「前回の甲子園でなかなかうまくいかなかったので、今度こそ絶対にやってやろうという思いで今日迎えました」
 あのロッテの村田兆治氏をほうふつさせる“令和のマサカリ投法”である。一度、テイクバックで大きなタメを作ってから目いっぱいに力感で投げ込む。横浜DeNAの三浦監督は「とらえきれなかったですね」と嘆いた。
 最速は146キロで平均球速は143キロだった。それでも打たれなかった。マサカリ投法のタメに合わせると、ボールがイメージよりも遅く来るのでタイミングが狂うのだ。横浜DeNAの大村巌野手コーチは、「独特の間があるので崩されないように気を付けていきたい」という話をしていたが、その“間”にタイミングを崩された。そこにスライダー、ツーシームをミックスして、丁寧に低めをついてくるので、横浜DeNAは「打てそうで打てない」“早川ワールド”の“錯覚の罠”にはまった。

 

 記念のツーショット写真を撮った藤川監督も早川をこう称えた。
「よく頑張ったんじゃないですかね。強い気持ちで最後まで攻めた。守備陣もいいプレー、いい連係が出ながらね。ご家族や身近な友人、お世話になった方、タイガースのスカウトらが非常に喜んでいると思う。凄い一歩を切ってくれた。能力があるので今日マウンドに上がった」
 1回に先頭、蝦名のセカンド頭上を狙うライナーを中野が好捕。2回にも先頭、オースティンの三塁を強襲したライナーを佐藤がファインプレーでアウトにした。早川も「野手の皆さんと梅野さんの配球、あとはファンの声援のおかげで何とか最後まで粘ることができました」と感謝した。
 一方で慣れれば対応される危険性はある。だが、初見のチームは同じような“錯覚の罠”に苦しむだろう。プロ野球の世界は、“いたちごっこ”だが、早川は、対応された“次”を準備しておく必要もある。
 藤川監督も、そのあたりの課題を感じたのだろう。
「(まだ)100%じゃない。今後に期待ですね」とも口にしていた。
 支配下登録する際に背番号が「129」から「31」に変わった。
 阪神では、殿堂入りの“ミスタータイガース”掛布雅之氏の象徴でもある栄光の背番号である。ただ最強助っ人カークランドから掛布氏が引き継ぎ、掛布氏が引退後は、1991年から萩原誠、広沢克実、浜中治、林威助、ジェフリー・マルテら期待の野手が「31」を受け継いできた。
「31」をつけた選手の勝利は、1942年の玉置玉一氏以来、実に83年ぶり。ただこの年は玉置氏は内野手登録で投手登録の「31」選手の勝利は早川が初となる。
 実はその早川の「31」を巡ってちょっとした騒動が起きていた。
 マルテが2022年に退団後は空き番となっていた「31」を育成出身の投手の早川につけさせたことに一部のオールドファンやOBが「掛布氏に失礼だ」「31の歴史や重みをないがしろにしている」と批判したのだ。
 ちなみに「6」、「7」、「9」、「17」、「21」、「80」、「82」、「85」の8つの背番号が空いていて、「17」はメジャー移籍の青柳、「21」は引退した秋山の背番号だった。
 かつては、球団幹部が「この背番号は掛布氏が納得するような阪神を背負っていくスラッガーに受け継いでいきたい」とコメントしたこともあった。

 

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