
「正直、監督1年目でここまでやるとは…勝因は岡田の遺産と藤川の学びだ」93歳の球界大御所が阪神の史上最速Vを語る…「巨人を始め他球団が弱すぎた」
阪神が7日、甲子園での広島戦に2-0で快勝して2年ぶり7度目のリーグ優勝を果たした。先発の才木浩人(26)が危険球で5回に退場するアクシデントがあったが、湯浅京己(26)が緊急登板、6回からは桐敷拓馬(26)、及川雅貴(24)、石井大智(28)とつなぎ、最後はクローザーの岩崎優(34)が締めた。チームの無失点勝利は26度目。藤川球児監督(45)は、球団史上初めて就任1年目で栄冠をつかんだ。1990年9月8日に優勝を決めた巨人を上回る史上最速V。2位の巨人に17ゲーム差をつけた。巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏(93)は「岡田の財産と藤川の学び」を阪神の勝因にあげた。
「選手達が強いわ」がVインタビュー第1声
超満員の甲子園をウルウルさせた。
2-0で迎えた9回。守護神の岩崎が登場曲に選んだのは、リンドバーグの「every little thing every precious thing」。藤川監督の現役時代の登場テーマ曲だった。
岩崎は2年前の18年ぶりの優勝時も亡くなった横田慎太郎さんの登場曲でマウンドに上がり、虎党の涙を誘った。そういう人の思いを知るベテランが最後の打者秋山をセンターフライに打ち取ると、打球の行方を見ずにグラブをポンと叩き、近本が、捕球と同時に両手を甲子園の夜空に突き上げた。
マウンド上に歓喜の輪ができる。ベンチから藤川監督が歩いてその輪に加わり、5度宙に舞った。右手でガッツポーズを作りながらの胴上げが、SNSでの話題をさらった。
恒例の優勝インタビュー。
第一声は「選手たちが強いわ」だった。
公式会見ではいつもどこかよそよそしい指揮官が思わず本音を漏らした。
才木が5回に先頭の石原の頭に投球を当て危険球退場するアクシデントもあったが、スクランブル登板の湯浅がピンチをしのぎ、高寺と近本の犠飛で奪った2点を桐敷、及川、石井、岩崎の黄金リレーで守り切った。阪神らしい勝ち方だった。
「胴上げをされてる時はファンのみな様を代表してみんなに胴上げしていただいてる気持ちで上がっていました。みなさんの応援があってここまで来ました。最高の気持ちです」
藤川監督はファンに感謝の気持ちを伝えた。
ペナントレースの開幕時期や、試合数も違い、史上最速の定義は難しいが、日付だけでシンプルに見ると1990年に藤田元司監督率いる巨人がやってのけた9月8日の優勝を1日上回っての史上最速Vである。
球界大御所の広岡氏は、「岡田の財産と藤川の勉強熱心さがつかんだ優勝」と、この藤川阪神の優勝を評価した。
「正直、藤川が1年目でここまでやるとは想像もできなかった。阪神で1年目の監督が優勝したのは初めてらしいがその一番の理由は、前監督の岡田が2年間で作った財産だ。村上、才木の2人が軸となり、最後まで困ることのなかった先発、石井、岩崎、及川らのブルペン、野球の基本であるピッチャー陣の質と層の厚さが群を抜いていた。そして近本、中野の1、2番、森下、佐藤、大山のクリーンナップの土台を作ったのも岡田だ。岡田に鍛えられた彼らが野球を知ったんだ。たとえ監督やコーチが迷走しようが、野球を知っている選手が投打の軸を構成しているんだから強い。我が巨人をはじめとして、追う他のチームが弱すぎたというのも阪神の独走を許した原因にある」
広岡氏が指摘するように投打の形は2023年に18年ぶりの優勝を果たした岡田彰布・現オーナー付顧問が作りあげたものだ。
そしてそこに藤川監督が新しい力を加えた。