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千葉ロッテのサブロー監督の就任会見に名物ウグイス嬢の谷保恵美さんがサプライズで登場
千葉ロッテのサブロー監督の就任会見に名物ウグイス嬢の谷保恵美さんがサプライズで登場

「負け癖。もういいやの姿勢が見える選手がちらほらいた」サブロー新監督は“最下位ロッテ”の何をどう変えるのか?

千葉ロッテのサブロー新監督(49)が8日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで就任会見に臨んだ。6月の交流戦前に2軍監督兼統括打撃コーチから1軍ヘッドコーチに配置転換されていたサブロー氏は、吉井理人前監督(60)の下で借金28、優勝したソフトバンクに31.5ゲームもの大差をつけられての最下位に沈んだ要因を「負け癖というか、もういいや、という姿勢が見える選手がちらほらいた」と指摘。再建へのキーワードに「厳しさ」をすえた上で「秋、春と厳しいキャンプになるのは覚悟していて欲しい」と心身両面から甘さや弱さを排除していく方針を掲げた。

 昭和の猛練習復活を宣言

 胸中に抱いてきた思いを忌憚なく言葉に変えた。

 千葉ロッテの本拠地ZOZOマリンスタジアム内で行われた新監督の就任会見。今シーズンの開幕から不在だった1軍ヘッドコーチに就いてから4カ月あまりの間に、不振を極めるチームへ募らせてきた違和感の正体をサブロー氏はずばり指摘した。

「僕が合流してからもチームの雰囲気は悪くなかった。悪くはなかったんですけど、変な言い方をすれば負け癖というか、もういいや、という姿勢が見える選手がちらほらいたので、まずはそこを変えたい、という思いはありました」

 サブロー氏の肩書きが2軍監督兼統括打撃コーチから、1軍ヘッドコーチに配置転換されたのが交流戦直前の6月2日。この時点で借金14の最下位に沈んでいた千葉ロッテは順位を変えられないまま逆に借金を28へ倍増させ、優勝したソフトバンクに実に31.5ゲームもの大差をつけられてシーズンを終えた。

 ソフトバンクとのシーズン最終戦を翌日に控えていた4日。退任する吉井前監督の後任をチームから要請されたサブロー氏は「大変そうだな、というのが正直な気持ちでした」とそのときの心境を振り返りながら、ヘッドコーチとして達成できなかったチーム改革を、新監督として着手する最初の仕事にすえた。

「確かに大変だけど、今の1軍の選手たちのほとんどを僕はファームで見てきましたし、何とかこの子たちと優勝できたら、と考えるようになりました。今シーズンは断トツの最下位で、難しいチーム作りになると思いますけど、厳しい練習で甘さを取り除いて、若い選手が多いチームが羽ばたけるようにしていきたい。」

 負けることに慣れつつあった選手たちを、どのような手段を介して変えていくのか。サブロー新監督には2軍を率いたときの成功体験がった。

「今年の春、ファームのキャンプでめちゃくちゃ厳しい練習をしたんですね。猛練習に耐えた選手たちはシーズンを通して怪我が少なかったし、技術的にもすごくパワーアップした。そのときの僕の中のスローガンが『昭和のキャンプ』をやろう、ということでした。それは今の1軍に最も足りない部分だと思っているので、秋、春と厳しいキャンプになるのは覚悟していて欲しい。今シーズンに関してはボロボロというか、本当に残念な結果に終わったので、その悔しさをバネに厳しい練習に耐えてもらって、精神的にも肉体的にも強い選手たちになって欲しいと思っています」

 令和になって久しい時代に、平成よりさらに前の「昭和」の二文字をスローガンに加えたのはなぜなのか。答えはサブロー氏が入団5年目の1999年から5年間に渡って千葉ロッテの監督を務め、今も恩師と慕う山本功児さん(故人)の厳しさとなる。

 山本さんは巨人時代の1979年(昭和54年)のオフに、長嶋茂雄監督(故人)による地獄の伊東キャンプで心身を一から鍛えられていた。サブロー新監督が言う。

「功児さんはすごく熱い方で、朝から晩までずっと練習につき合ってくれるような監督でした。僕にとっては1軍のレギュラーを獲れただけでなく、その先の成績といったものを含めてすべて与えてくれたので、そこは真似していきたい。ただ、チームの成績はあまりよくなかったのでそこは真似しないように。良いところだけをとっていきたい」

 おぼろげながらも、キャンプの青写真も描き始めている。

「まだ具体的には決まっていないんですけれども、フィジカルトレーニングとボールを使ったトレーニング、要は打つ、投げる、守るというのを同時にやりたいと思っています。先にウエイトをやって体を作りながら、午後からはもう打ちっ放し、守りっ放し、走りっ放しといった形でできたら良いかな、と」

 だからといって、厳しさだけを前面に押し出すつもりもない。

 2016年限りで引退したサブロー氏は、千葉ロッテのスペシャルアシスタントを経て、2020年には楽天のファームディレクターに就任。1・2軍首脳陣のパイプ役やドラフト会議における助言を行い、2022年にはスカウティングアドバイザーを務めた経験が、2軍監督として千葉ロッテに復帰した2023年以降も生きていると言う。

「僕はコミュニケーションの取り方が下手くそでしたけど、楽天さんで若手選手への対応も任されていた中で『こうすれば良いのか』というのがだいぶわかるようになりました。厳しいことも普通に言いながら、その中で冗談も言い合う。友だち感覚と言ったらおかしいかもしれないけど、そのくらいの感覚で選手一人ひとりと接していったほうが、逆に萎縮させずに思い切ってプレーしてくれると思っています」

 ハードの前に「超」がいくつもつくような練習。そこへ硬軟織り交ぜたコミュニケーションを介して選手たちの心身両面から甘さや弱さを排除していった先に、どのようなスタイルで最下位に沈んだチームを変えていくのか。

 3割打者がソフトバンクの牧原大成(32)だけで、逆に防御率1点台が同じくソフトバンクのモイネロ(26)を筆頭に4人もいた今シーズンのパ・リーグの戦いを目の当たりにした経験から、こちらの答えもすでに弾き出されつつある。

「一番痛烈に感じたのは、これだけ投高打低になってくると、打ち勝つのはちょっと難しいということ。やはり守り勝つ野球で、ウチの伝統でもある粘りのある攻撃と巧い走塁を中心に1点を取っていく野球になると思っています」

 ソフトバンクとの今シーズン最終戦後に、新監督への就任がサプライズ発表されてから3日。ヘッドコーチを含めて、球団側と協議しながら組閣に着手するサブロー氏は「厳しいだけではなく、アメとムチをうまく扱えるような方に来ていただけたら」とイメージを膨らませながら、監督1年目への準備を進めていく。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

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