なぜ12.27リヤド発表会見で井上尚弥と中谷潤人の発言は対照的だったのか…モンスターはピカソ相手に再び“キラー”から“倒し屋”へ変貌?!
プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)とWBC同級2位のアラン・ピカソ(25、メキシコ)の防衛戦をメインに12月27日にサウジアラビアのリヤドで行われる「THE RING V: NIGHT OF THE SAMURAI」の記者会見が7日、都内のホテルで出場6選手が参加して開かれた。同興行では来年5月に東京ドームで激突する前WBC&IBFバンタム級う王者の中谷潤人(27、M・T)もスーパーバンタム級へのテストマッチを戦い、2人にとって絶対に負けられない“前哨戦”となる。また前WBA&WBC統一世界フライ級王者、寺地拳四朗(33、BMB)のIBF世界スーパーフライ級王座への挑戦、堤駿斗(26、志成)のWBA世界スーパーフェザー級暫定王座への挑戦に、弟の堤麗斗(23、志成)のプロ4戦目、前日本ライト級王者の今永虎雅(26、大橋)と“キューバの怪物”の注目マッチも行われる。

“選ばれし者”しか上がれないサウジのリングにモンスターが初見参する。昨年10月に3年30億円の超大型のスポンサー契約をリヤドシーズンと結んではいたが、実際現地で試合をするのは初。
井上は「世界へ向けてのアピールと来年の5月のビッグマッチに向けての大事な試合。気合を入れてこの興行に挑みたい」との意気込みを口にした。
対戦相手のピカソは、5月のラスベガス決戦で当初対戦相手に浮上したメキシコの無敗のホープ。だが、父親や周囲が「今戦えば1ラウンドで終わる」という声に怖気づいて辞退。
結局、代役にラモン・カルデナス(米国)が立てられ、井上にTKO負けを喫したが、ダウンを奪うなどの大健闘で評価を上げた。
ピカソは7月にノーランカーの亀田京之介と対戦して高度なディフェンススキルは見せたものの、攻撃の迫力に欠き、一人がドローの2-0判定勝利に終わった。
米専門サイト「ボクシングシーン」が「派手さも説得力もある勝ち方ではなかった。年末に予定されている井上戦に向けた“アピールできる勝利”と言える内容でもなかった」と、酷評するほどの不甲斐ない試合内容だった。
しかし、井上は「前回のムロジョン・アフマダリエフ戦に続き、またひとつピカソ仕様のボクシングを見せたい。印象は好戦的。楽な戦いにはならない」と油断などしていない。
ただこうも言った。
「今回は倒し切りたい。もちろん勝ちにこだわり、勝ち方にこだわりたい」
9月のWBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦では「倒す」「魅せる」といった欲の部分を一切排除。勝ちに徹する“キラー井上”でトップランク社のボブ・アラムCEOが「コンプリート(完璧)」と評したファイトを見せて判定勝利した。
しかし、今回は、かなりの実力差があるため、「倒す」「魅せる」と言ったエンターテイメントを意識したボクシングをしなければならない。すでに世界的な名声は十分にあるが、サウジ発で全世界へモンスターの存在感を示すためにはKOシーンは不可欠だ。
カルデナスと違い、ピカソに一発の怖さはないとはいえ、ボディショットなどはうまく、しかもディフェンス力は高い。
井上は自らのボクシングが崩れる危険性とも対峙しながら、そのピカソのディフェンスをこじあけなければならない。
ただピカソと対戦した亀田は「ディフェンスは堅かったし、弱くはなかった」としたものの「パンチ力はなかった。すぐに終わるんとちゃいますか。オレは(井上選手が)倒すと思いますね。前半で終わらせるんじゃないですか。5ラウンド以内」と予想している。
本来ならピカソが相手ではモチベーションを保ちにくいだろう。だが、サウジという舞台設定と、来年5月にビッグファイトを戦う中谷との共演がモンスターのモチベーションを高く維持させている。

