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堤がドネアに傷だらけの逆転勝利(写真・山口裕朗)
堤がドネアに傷だらけの逆転勝利(写真・山口裕朗)

「フェアな採点ができていない」ドネア夫人が不服も「鼻が折れた」堤聖也が「左拳4本の血豆が全部破けた」ほど殴られたレジェンドとの死闘を2-1判定で制した理由とは?

 プロボクシングのWBA世界バンタム級の団体内統一戦17日、両国国技館で行われ、正規王者の堤聖也(29、角海老宝石)が2―1判定で5階級制覇王者で同暫定王者のノニト・ドネア(43、フィリピン)を下してV2に成功した。4回にあわやダウンのカウンターを浴びるも持ち味の粘りで盛り返して12回には左フックで“疑惑のダウン”を奪うなどし勝利を勝ち取った。試合後、堤は鼻骨を骨折、ドネアは右目上のカットと左手の拳4本の血豆が避けたことを明かす激闘だった。堤は大晦日にWBAバンタム級挑戦者決定戦を戦う元4階級制覇王者、井岡一翔(36、志成)との対戦を熱望した。

 

2-1判定を聞いた瞬間の堤とドネア(写真・山口裕朗)

 

 両国国技館のインタビュースペース。
 交互に現れた2人の姿が激闘を物語っていた。
 絆創膏を貼った堤の鼻は大きく腫れ変形してしまっていた。
「鼻は折れてますよね。今たぶん人間の正しい鼻(の形を)していないと思う。折れてるなと思いながら戦いました」
 5、6ラウンドのどこかで折られて鼻呼吸が苦しくなっていたという。それでも「仕方がない。鼻を気にしてても鼻は治らない。そういう(痛い、苦しいの)感情は無視して」前へ出続けた。
 敗者のドネアは頭にテーピングをグルグル巻きにしていた。右目の上をカットしたための応急処置。そして堤の勝因を聞かれ、その左手の拳を突き出した。4本のナックル部分は血豆が破れ、赤くただれて腫れていた。
「この拳を見てくれ。これだけのパンチを受けたのに倒れないタフさが堤にはあった。それが彼の勝因だ」
 まさに死闘だった。
 老獪なドネアの罠にかかった。
 堤は、ドネアの伝家の宝刀である左フックを警戒し、1、2ラウンドはジャブを軸に足を使ってのサークリングに徹して、カウンターを浴びる危険性のある右のパンチを封印していた。
「パンチを受けて強いけれど、反応できるし見えるからいい」
 堤はあらゆる想定をしていた。その一つが「最初に強いのを見せてこないで“いける、受けても大丈夫“と思わせといてえぐいのを放ってくるパターン」だった。
 だが、1、2ラウンドを戦った堤は、まさか、そのパターンだとは感じずに、3ラウンドからサークリングを止めて「よし!」と距離を詰めて前へ出た。そして4ラウンドにカウンターの右のショートアッパーをもろに被弾した。
「やばいパンチだった」
 ドネアの罠にはまり、バランスを崩してダウンしかけたのだ。おまけに鼻の上も切った。
「攻め急いだ。手札を出すのが早かった。4ラウンドでスイッチを入れたその時に急にバチンってもっと強いのが瞬間的に来た」
 だがここで踏み留まりペースを失わないのが堤の凄さだ。
 石原雄太トレーナーに「足が動くなら出入り、クリンチを使って回復に務めよう」と指示されると、6ラウンドから息を吹き返す。右ストレートがヒットし、打ち合いにも動じず、7ラウンドには、ロープを背負わせて左右のパンチを浴びせてラッシュ。ドネアが狙うカウンターを勢いで封じ込んだ。
 逆襲が始まった。
 8ラウンドにはドネアが足を使い始めた。明らかな休憩ラウンド。堤の右フックで、ドネアがバランスを崩す。9ラウンドには場内から「真骨頂はここからだろう」のファンの檄が飛んだ。
「前半をしのぎ、後半勝負」
 コアなファンは戦いが堤ワールドに入りつつあることを理解していた。だが、堤はトップギアに入れることができない。
 4ラウンドに浴びたカウンターのトラウマが残っていた。
「向こうが休んでる時に行けよとみんなが思う時間があったと思う。でもあそこでやっぱり行かせてもらえない。ベテランのうまさというか、経験の差。“やっぱり危ねえ”と思った。1発をもらったら結構ダウン取られるかもしれない。せっかく持ち直しているのに1回でも(ダウンして)10対8がついたら終わる。その恐怖を与えられるに十分なパワーがずっとあった。僕がパンチ当てた後の一発の瞬間が、凄く速い。それは後半になってもずっと生きていた」
 ドネアは「打つよ、打つよと、圧だけをかけて休む」という高度なテクニックを使っていたという。

 

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