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横浜F ・マリノスのFW水沼宏太がすべてのゴールに絡む活躍を演じて3-1で神戸に快勝して3シーズンぶり5度目のV(資料写真・アフロ)
横浜F ・マリノスのFW水沼宏太がすべてのゴールに絡む活躍を演じて3-1で神戸に快勝して3シーズンぶり5度目のV(資料写真・アフロ)

なぜ横浜F・マリノスは3季ぶり5度目のJリーグ制覇を果たせたのか…リンクした3つの思い

 選手だけではない。アタッキングフットボールを掲げ、3年前に頂点へ導いたアンジェ・ポステコグルー監督(57)も、セルティックに引き抜かれる形で昨夏に電撃退団している。
 それでも、今シーズンのマリノスには一体感が脈打つ。ベガルタ仙台から今シーズンに加入した西村は、新天地を「ファミリーのようです」とたとえているほどだ。
「プロサッカー選手になって、こんなにも青春というものができるとは思わなかった」
 一体感の強さは、宮市への思いをピッチ上の戦いに反映させた軌跡にも通じていく。土壌を整えてきたのは、2019シーズンからキャプテンを務めるアカデミー出身の喜田だった。
「僕自身、キャプテンとして何を残せたかはよくわからないんですけど……」
 小学生年代からマリノス一筋でプレーする喜田は、謙遜しながらさらに言葉を紡いだ。
「それでも自分のすべてをかけて、マリノスのキャプテンを務める覚悟は持ってきました。チームメイトやスタッフに対して常に真正面から、丁寧に向き合おうと。調子がいいときも苦しいときもそこだけは絶対に外さないようにしてきたし、どのような状況でもチームを信じてきました」
 身長170cm体重64kgのサイズより、はるかに大きく見える喜田の背中はいつしか強力な求心力を放つようになった。3年前の優勝を、喜田はリスペクトを込めながらも「勢いそのままに突っ走った」と表現する。対照的に昨シーズンの2位を受けて、攻撃的なスタイルがしっかりと認知された今シーズンは、周囲の警戒網をチームが一丸になって乗り越えてきた自負がある。
 だからこそ、総得点70がリーグ最多、総失点35が同最少タイでJ1を制した価値は大きい。優勝決定後に人目をはばからずに流した涙の意味を喜田はこう明かした。
「試合に出た選手だけでなく、常日ごろからハードワークして、試合に出られなくてもチームのためにやり切った選手がいるからこそタイトルを取れたと身を持って体感している。全員がヒーローだと心から思っているし、一人ひとりにありがとうと伝えたい」
 神戸に敗れていれば川崎が逆転での3連覇を達成した最終節。前半終了間際に追いつかれても動じず、最後までマリノスらしさを貫けた背景には、昨シーズンまでの土台へさらに融合された水沼の、宮市への、そして誰よりもマリノスを愛する喜田の深く、熱い思いがあった。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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