岡田監督は2005年の優勝時には金本元監督を4番に起用していた
岡田監督は2005年の優勝時には金本元監督を4番に起用していた

岡田阪神の打線強化テーマは“脱・金本打法”

岡田彰布氏を新監督に迎えた阪神が5日から高知・安芸キャンプの第2クールに入る。岡田監督がこの秋のテーマとして取り組んでいるのが、ヤクルトに敗れたクライマックスシリーズでも顕著に出た「ストレートに弱い」打線の改善だ。その原因のひとつとして考えられるのが、2016年から3年間、指揮を執った金本知憲氏が、その監督時代にチームに浸透させようとしたバッティング理論が抜けきっていないこと。“脱・金本打法”で課題の打撃強化を狙う。

 「少し変えれば全然打てる」

 

 監督就任会見で岡田新監督は、こんな話をしていた。
「すごくバランスのいいチームだと思っているが、今年は(課題が)得点。非常に得点という意味では、消化不良という形で、もう少し打ってあげたらというのがあったけれど、少し変えれば全然打てると思います」
 レギュラーシーズン3位に食い込んだ阪神だが、チーム打率.243、同得点489、同本塁打84、同得点圏打率.241はいずれもリーグ5位。本塁打に至ってはトップの174本のヤクルトに比べて半分以下だ。
 これは、174本のうち村上1人で56本を打っているのではあるが、打線強化は、来季“アレ”を狙うためには、5年連続の失策数のワーストを更新した“守乱”ストップと共に取り組まねばならない課題である。
 だが、岡田監督は最後に「少し変えれば打てる」という注目発言を付け加えていた。岡田監督は「何を少し変えよう」としているのか。甲子園での秋季練習、高知の安芸キャンプで、その輪郭が見えてきた。
 「差し込まれるな」「前で打て」という打撃改革である。
 ネット裏で10年間、評論家として阪神の野球を見てきた岡田監督は、打線の変化をずっと追いかけてきた。大きな変化があったのが、6年前に監督に就任した金本監督時代だったと分析していた。
「簡単に言えば、ボールを引き付け後ろ足重心で体の回転で打つ打法よ。これがうまくいけば、ボールの見極めができ、変化球にも対応できて、トータルで打率が残る。だが、この打法には、バットスイングの速さとパワーが必要になるので、できる打者が限られてくるのよ」
 金本元監督は、監督に就任すると、現役時代に教えを請うた広島のトレーニングコーチと契約するなどして本格的なウエイトトレの導入をした。金本打法を身に付けるために必要なパワーを基礎から鍛え直そうとした。
 岡田監督は、阪神の前監督時代に金本氏を4番で使った。2004年7月29日の中日戦では、岩瀬から左手首に死球を受けて骨折。連続フルイニング試合出場記録の継続が危ぶまれたが、岡田監督は、金本氏の意思をくみ取り、「出れるやろ。守備は赤星に任せとったらええやん」と、翌30日の巨人戦のスタメン表に黙って名前を書いた。金本氏は、その試合で右手1本で2本のヒットを打つ伝説を残し、その後、記録は、1492試合まで伸びて、カール・リプケンを抜く世界記録を達成している。その金本氏の現役時代に岡田監督は、雑談の中でこんな話をしたことがあるという。
「カネのバッティングは、カネにしかでけへんからな」
 それは金本氏が、いつの日か指導者になる際に向けての忠告だった。
 あそこまでポイントを手前に置いて、ボールを打ち返すことができるのは、金本氏がトレーニングで鍛えあげた強靭な肉体があってこそ可能な理論で、万人にあてはまるものではないということを伝えたのである。
 だが、金本氏は、ウエイトトレによるパワーアップとセットで、その自らの打撃理論をチームに浸透させようとした。

 

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