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明治神宮大会でクラーク国際高の佐々木監督に投手が投球動作に入っても続く「声出し」を注意された大阪桐蔭の西谷監督は戸惑いを隠さなかった(資料写真:北川外志廣/アフロ)
明治神宮大会でクラーク国際高の佐々木監督に投手が投球動作に入っても続く「声出し」を注意された大阪桐蔭の西谷監督は戸惑いを隠さなかった(資料写真:北川外志廣/アフロ)

クラーク国際ベテラン監督が激怒して物議を呼んだ大阪桐蔭の「声出し」の何が問題だったのか?

 明治神宮大会の高校の部、準々決勝が20日、神宮球場で行われ、優勝候補の大阪桐蔭高がクラーク記念国際高に12-2で6回コールド勝ちを収めたが、クラーク高の佐々木啓司監督(66)が投球動作中にも続く目に余る声出しに「いつまで声を出しているのか」と怒りの声をあげる“事件”が起きて物議を醸した。

 「いつまで声を出しているんだ!」

 

 関係者によると、新型コロナ対策で、観客の声出し応援が禁止されている神宮球場に、その声はハッキリと響いたという。
「いつまで声を出しているんだ。ピッチャーが投げているのに」
 立ち上がりに1点を奪い、さらに2回の大阪桐蔭高の攻撃だった。クラーク高の投手が投球動作に入っても、大きな声が大阪桐蔭ベンチから出続けていたため、クラーク高の佐々木監督が、敵チームに注意を促したのだ。
 この怒りの声に驚いたかのように大阪桐蔭ベンチの雰囲気は一変。以降、投手がセットポジションに入ると「声出し」をストップした。
 佐々木監督は監督歴35年を超えるベテランで、駒澤大学附属岩見沢高校監督時代には、同校を甲子園常連校に育て上げ、センバツベスト4進出の経験があり、クラーク国際高の監督に転身後も2016年の夏の甲子園出場を果たしている北海道アマチュア野球界の重鎮。それだけに試合中に大阪桐蔭へ対して発した怒りの声が与えた影響力は小さくない。
 公認野球規則にも、大会規定にも、「投球動作に入った時点での声出し禁止」は、明確には定められてはいない。
 公認野球規則6・04「競技中のプレーヤーの禁止事項」の中には、〈1〉言葉、サインを用いて観衆を騒ぎたたせるようにあおったり、あおろうとすること。〈2〉どんな方法であろうとも、相手チームのプレーヤー、審判員または観衆に対して、悪口をいったりまたは暴言を吐くこと。〈3〉ボールインプレイのときに“タイム”と叫ぶか、他の言葉または動作で明らかに投手にボークを行わせようと企てること。とはある。
 今回の「声出し」が、この〈3〉の「他の言葉または動作で明らかにボークを行わせようと企てること」に抵触するかどうかだが、投手が投球動作に入った時点でのベンチからの「声出し」が目に余り、それが明らかなボークを誘う妨害動作として審判が認めた場合には注意が与えられる。今回注意はなかったが、相手ベンチの監督が大声で注意するのは極めて異例だ。
 結局、大阪桐蔭は、以降、投球動作中の「声出し」行為を自粛したが、猛攻は止まらず、この回に4点、3回にも5点を追加。6回に12点目を奪い、10点差をつけたところで規定により“サヨナラ”コールド勝ちとなった。
 各社の報道によると試合後に、西谷浩一監督(53)は「今はまだ新チームで一生懸命、声を出していただけです。それもダメなのなら僕の勉強不足です」と、戸惑いのコメントを残したという。明確にルールに違反した行為をしたわけではないので西谷監督が戸惑うのもある意味納得がいく。
 では、今回クラーク高のベテラン監督を激怒させた「声出し」の何が問題だったのか。本当に大阪桐蔭の行為に問題はあったのだろうか。
 「声出し」は、野球の基本だ。プロでも、「声を出せ」と、監督、コーチやチームのリーダーが奨励するし、横浜DeNAの三浦大輔監督は、スタメン出場機会がなくとも、ベンチで声を出し続けてチームを盛り上げて試合に入り込んでいる大田泰示の姿勢を何度となく称えていた。チームスポーツである野球に流れを持ち込み、勢いや一体感を生み出すためには、ベンチの声はなくてはならないファクターである。
 前述したように投球動作中であっても明確に「声出し」を禁じるような規定はない。だが、その「出し方」に作法はある。フェアプレーの精神を重んじるグランド内の暗黙のモラルだ。報道によると佐々木監督は「紳士的にやらないとダメ」とも説明したという。

 

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