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明治神宮大会でクラーク国際高の佐々木監督に投手が投球動作に入っても続く「声出し」を注意された大阪桐蔭の西谷監督は戸惑いを隠さなかった(資料写真:北川外志廣/アフロ)
明治神宮大会でクラーク国際高の佐々木監督に投手が投球動作に入っても続く「声出し」を注意された大阪桐蔭の西谷監督は戸惑いを隠さなかった(資料写真:北川外志廣/アフロ)

クラーク国際ベテラン監督が激怒して物議を呼んだ大阪桐蔭の「声出し」の何が問題だったのか?

 今オフに1軍投手チーフコーチから巨人のファーム総監督に配置転換となったPL学園出身の桑田真澄氏は、現役引退後に自らがオーナーを務めていた少年野球チームでヤジを禁止していた。
「自分のチームが勝つために必要な応援、激励の声を出しなさい。相手チームの投手やバッターへのヤジや罵声、プレーを邪魔するような声は絶対に出さないこと。その後、高校野球から、もっと上のレベルで野球をするようになっても、この姿勢は守って欲しい」と訴えていた。
 モラルを教えたのだ。
 甲子園を頂点とした勝利至上主義が、アマチュア野球界に根強く残る中で、こういう教えがすべてのチームに浸透しているとは言い切れない。
 大阪桐蔭高は何も相手の選手をヤジったわけではない。チームに一体感を出すために元気を出していただけだろう。しかし、相手投手の投球動作途中の「声出し」には問題は残る。春夏9度の全国制覇を果たし、数多くの選手をプロへ送り出している現在の高校野球界を代表する超名門チームだからこそ、単なる強さだけではなく「声出し」の作法を含めた、グラウンドでの選手の姿勢にも手本を示して欲しいとの思いが、佐々木監督にはあったのかもしれない。大阪桐蔭は全国のチームから目標にされる立場にあるのだ。
 有名税とも言えるが、少しでも問題があればやり玉に上がる。
 また投手が投球動作に入る瞬間での「声出し」にはボークを誘発するなどの妨害行為以外にも問題がある。投球動作に入った時点での「声出し」は「サイン盗み」につながる疑いを持たれるのだ。今回の大阪桐蔭高の「声出し」にはそういった意図はなく、疑いのある声がまったくなかったことは明記しておきたいが、原始的な行為として、一部の学校で横行しているのが、キャッチャーのミットの構えを見て「狙え!」「叩け!」「絞れ!」などの隠語をチーム内で決め、ベンチ内から選手が大声で、コースの内角、外角、あるいはストレートか変化球かを伝える行為だ。
 1998年の夏の甲子園での伝説の名勝負、PL学園―横浜高戦で、PL学園の三塁コーチだった平石洋介氏(現在・西武ヘッドコーチ)が松坂大輔氏を攻略するためにミットの構えを声でバッターに伝えたことで有名になったが(のちに平石氏は横浜を混乱させるための目的でサイン盗みではなかったと証言)、その年の12月に高野連が大会規定に二塁走者の動きなど紛らわしいサイン盗み行為を禁止する要項をつけ加えた。
 キャッチャーの出しているサインを見て教えているわけではないので、厳密には「サイン盗み」ではないが、野球界では、この「声出し」も「サイン盗み」の行為の範疇として捉えられている。
 西谷監督が「声出し」について生徒にどう指導していたかはわからないが、投球動作に入ってからの「声出し」には、そういった問題点が含まれていることも、現場の指導者は頭に入れて細かく指導しなければならないだろう。
 大阪桐蔭は今日21日の準決勝で夏の甲子園を制した仙台育英高と対戦する。クラーク国際高の佐々木監督のクレームは、高校野球界への重要な問題提起とはなったが、今回の騒動は、その後、公式に問題化したわけではない。大阪桐蔭高には「声出し騒動」に委縮することのない”紳士的”な全力プレーを期待したい。
(文責・RONSPO編集部)

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