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4団体統一を成し遂げた井上尚弥が具志堅氏を越えて史上最多となる6度目のMVPを受賞(写真・山口裕朗)
4団体統一を成し遂げた井上尚弥が具志堅氏を越えて史上最多となる6度目のMVPを受賞(写真・山口裕朗)

具志堅氏超え最多6度目MVP受賞の井上尚弥がSバンタム級”最大の強敵”フルトンの映像を見て「気がついた」”死角”とは何なのか?

 論理的解説が評判の元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏と推察してみた。飯田氏は「独特の感性を持つ井上選手だからこそ見つけたのでしょうが、ハッキリ言って明らかなスキや弱点はありません」と言う。
 21戦無敗(8KO)のフルトンは身長1m69、リーチ1m79の体格を生かしたクレバーなボクサーファイター。ここ4試合は連続で判定決着しているように一発の怖さはないが、後ろ重心でバックステップが速く、ディフェンス能力が高い。アッパーとフィジカルを使ったインファイトもできてスタミナもある。パンチの当て勘が鋭く、左ジャブ、カウンターの左フック、ノーモーションの右ストレートや、スイング系の右フックなどロングレンジから放ってくるパンチは多彩。井上が、もし負けるとすれば、うまくポイントアウトされ12ラウンドつかみきれず空回りするというパターンだ。
「距離の戦いになると思います。フルトンはロングレンジと密着戦の2つが得意。懐が深いので井上選手は、バンタム級の戦いよりもパンチを当てるためには、もうシューズ半分ステップインしなければならない。ただ、そこがフルトンにとっても危険域なんです。おそらくフルトンは、その距離での戦いを避けてきます。1ラウンドの中で、そこで戦える時間は、少ないかもしれませんが、井上選手は、そこになんらかの糸口を見つけたんじゃないでしょうか。ドネアとの再戦では、その距離での攻防でフェイントやポジションの変化などを使って翻弄して倒しましたからね」
 フルトンの得意パンチのひとつがジャブだ。
 ただ左を打つときにガードが下がる。打ち終わりには、しっかりとガードを上げるが、左を打つ際にわずかなスキがある。井上は、ジャブを封じて、距離を詰めにいき攻撃に出るのだろうが、フルトンは、パンチを打った後に、2段階、3段階の”モンスター対策”を用意してくるだろう。
「フルトンは、ジャブやフック、右ストレートなどのパンチを打ってポイントを取りにいった際に、井上選手の反撃を封じるために2段階目のパンチを準備してきます。それが通用しなかった場合は、ステップバック、あるいは密着してのクリンチを使って井上選手の強力なパンチを封じにくるでしょう。私は、井上選手が見つけた糸口は、その2段階目、3段階目の攻防の中にあるのではないかと踏んでいます。フルトンはリスクを避けることを常に頭に置いているボクサーですが、反面、常に攻撃に転じる用意もしています。そこでポイントを取っていくわけですが、体格差では劣るものの井上選手がスピードでは上です。いずれにしろ高度な駆け引きが勝敗の決め手になると思います」
 大橋会長も「減量から解放されるスーパーバンタム級が尚弥の適正階級だと思うし、スピードではフルトンより上」と見ている。
 井上は、4月に元WBA世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑(33、セレス)と対戦する元アマ全米2連覇の王者で10戦全勝のホープジャフェスリー・ラミド(23、米国)と、この日から、3日連続のスパーリングを開始。3月には、フェザー級のランカーをさらに2人呼び、スパーリングでフルトン対策を練り込んでいく方向。
「ぬかりなくやっていきたい」
 世界が注目する”モンスター”の第二章の戦いが始まった。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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