• HOME
  • 記事
  • 野球
  • 藤浪晋太郎が大谷翔平との同級生対決で魅せた“魔球”の正体とは…フォーシームにMLBで通用する特殊な軌道があることが判明「打者がホップしていると錯覚する」
アスレチックスの藤浪晋太郎がOP戦2度目の登板を3回1失点にまとめて初勝利。指揮官や捕手は進歩した制球力を称えた(写真は資料:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
アスレチックスの藤浪晋太郎がOP戦2度目の登板を3回1失点にまとめて初勝利。指揮官や捕手は進歩した制球力を称えた(写真は資料:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

藤浪晋太郎が大谷翔平との同級生対決で魅せた“魔球”の正体とは…フォーシームにMLBで通用する特殊な軌道があることが判明「打者がホップしていると錯覚する」

 

 VAAとは何か? このデータは、まだここ2年ぐらいで認知されたものだが、投手の投げたボールがどんな角度でホームベースに達したかを表している。軌道が仮に、地面に対して完全に並行であれば、VAAの値はゼロ。ただ、投手は基本的にボールを投げ下ろすので、数値はマイナスになる。

 あくまでもフォーシームで話を進めていくが、米データサイト「fangraphs」に寄稿しているアレックス・チェンバーレインが公開しているデータによると、21年の大リーグ平均は−5°。アイオワ大のデータアナリストを務めるリード・ザーラドニックの調査では、角度が小さくなるにつれて、空振り率が高くなっている。
 もっとも高めのストライゾーンに投げないと効果はなく、加えてVAAが小さくなるためにはリリースポイントが低く、エクステンションが打者寄りであることが、大きな要素となっている。
 このVAAが小さな投手としては、アストロズのクリスチャン・ハビア、ブルワーズのジョシュ・ヘイダーらが知られるが、ハビエルなど球速も93(150キロ)〜94マイル(約151キロ)と平凡で、縦の変化量も平均よりは上だが、極端に優れているわけではない。

 それなのに真っすぐで空振りが取れる。ブレーブスのスペンサー・ストライダーも似たような傾向があるが、二人のVAAはともに−4.1°。これはリーグでもトップ1%の希少値で、つまり、それだけ見慣れない軌道ということになる。まだ、このVAAがもたらす影響については議論の余地がありそうだが、「こっちでは日本と違って、フォーシームは高め、高め、と言われる」と藤浪。28日の登板を終えて「今日も結構、高めの要求が多かった」と振り返った。

 アスレチックスとしては、藤浪が真っすぐを高めに制球できるなら、相手には浮き上がって見えるはずなので、そうした特徴を生かすべく、意図的に多く投げさせている。ハビエルとストライダーの身長は低く、そもそもそういう球を投げられる資質を兼ね備えているが、藤浪の身長は198センチ。角度があるはず、という固定観念も利用できる。
 マスクを被ったシェイ・ランゲリアーズも高めの真っすぐについて、「彼にとっては、カギになる球だと思う」と話し、続けた。
「彼にはスプリットとカーブがあるから、あの位置から落とせれば、ピッチトンネルが構成できる。より、真っすぐも効果的になる」
 ストライゾーンの高めからカーブを曲げたり、スプリットを落とせば、真っすぐとの見分けがつかず、同じピッチトンネルにも入る。そうすれば、相乗効果も期待できる。
 藤浪自身、「日本のバッターって、どっちかといえば、自分を相手にするときは高めを振らないようにしてフォアボールを取ってやろうか、というスタイルが多いと思う。チームによりますけど。そういうなかで、(メジャーの打者は)しっかり高めを振ってくるな、という違いを感じた」と打者の反応を感じ取っていた。
「(高めの真っすぐは)今後も武器になる。生かしていきたい」
 実際、彼が飛躍するとしたら、この非凡な角度を持ったフォーシームがスプリット以上に頼りになるボールになるのかもしれない。
(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

関連記事一覧