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不思議な人生ドラマ…阪神戦で22年連続勝利の日本タイ記録を達成したヤクルト43歳の石川雅規は“長嶋巨人”への入団が内定していた

 試合後に22年連続勝利の秘訣を聞かれた石川は、「必死でしっかりとした準備をすることを心がけています」と返したが、肉体のケアに加えて入念なデータの下調べがある。あとはチェスのような作業だ。
 6回にも先頭の近本に二塁打を許してピンチを招く。中野は、最低でも進塁打で三塁へ送りたいところだったが、石川はそうはさせない。打球を引っ張らせたくない石川は当然アウトコースから配球する。
 初球は外角スライダーを見送らせてストライク、2球目も外角へストレート。これはボールになった。3球目はスライダーが甘く入ってファウル。このファウルのタイミングでバッテリーは逆方向への意識があることを察知したのだろう。4球目に内角勝負を選び、そこにシンカー。中野は、それをおっつけようとして、ドンつまりのショートゴロに倒れ、走者を三塁に進めることができなかったのである。打者心理を見透かす石川の投球術を象徴するシーンだった。
 ここで石川は、お役御免。後を受けた木澤は、小野寺を三振、大山をセンターフライに打ち取って得点を許さず、さらに石山、大西、星とつないでの完封リレーで石川の22年連続勝利の偉業を全員でサポートした。
「一つ一つの積み重ねですけども、1つ勝つ難しさというのをすごくわかっているので、今日の勝利は次につながる勝利だと思います」

 石川は2001年のドラフト1位の自由枠で青山学院大から入団した。いわゆる逆指名。その舞台裏では壮絶な駆け引きがあった。2年前に亡くなられた名スカウトの片岡幸雄氏が、最後にかかわったドラフトで、生前に、その舞台裏のすべてを聞いたことがある。
「実は100%巨人に決まっていたんだよ。でも、石川が肘に不安があったこともあり、甲子園で、寺原という凄い投手が出てきたことで、長嶋監督の鶴の一声で、突然、“寺原でいきたい”と方向転換したんだ。すぐに担当スカウトが、その情報をつかんできた。うちだけではなく近鉄には青学出身のスカウトがいたので、すぐにあっちも情報をつかんで熱心だったんだけど、うちは、『若松監督が必ず使う。古田があなたを10年間活躍できるエースに育てる』という殺し文句で交渉したんだ」

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