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大活躍した富永啓生(左)と河村勇輝(右)が抱き合って歴史的勝利を喜ぶ(©FIBA)
大活躍した富永啓生(左)と河村勇輝(右)が抱き合って歴史的勝利を喜ぶ(©FIBA)

バスケW杯で日本に歴史的勝利を奪われたフィンランドメディアは「最も屈辱的敗戦」と母国を批判し「情熱的ディフェンス」と日本を称える

パリ五輪の出場権もかかっているバスケットボールW杯で日本が歴史的勝利をあげた。27日に沖縄アリーナで行われたフィンランドとの1次リーグ第2戦で、最大18点差をつけられる劣勢から富永啓生(22、ネブラスカ大)と河村勇輝(22、横浜)らが3ポイントシュートを立て続けに決めて最終クオーターに逆転。98-88のスコアでFIBAランキング36位の日本が格上24位の欧州チームから金星を奪い取った。「最も屈辱的な敗戦」と母国を批判したフィンランドメディアは「日本のディフェンスは情熱的だった」と完敗を認めた。五輪を含めた世界大会の連敗を「11」で止めた日本は通算1勝1敗として、史上初の1次リーグ突破をかけて29日の最終戦で東京五輪銅メダルの豪州と対戦する。

 

金星をゲットしたトム・ホーバス監督も満席となったファンの祝福にガッツポーズで応える(©FIBA)

 

 国際バスケットボール連盟(FIBA)の大会公式X(旧ツイッター)への粋な投稿が、日付が28日に変わった直後の日本列島を再び泣かせた。
 今大会初勝利を劇的な大逆転でもぎ取った直後。沖縄アリーナのコート上で日本の唯一のNBAプレイヤー、渡邊雄太(28、サンズ)と富永が笑顔を弾けさせながら右手を合わせる写真を投稿。その上でこんな英文を添えたからだ。
「Slam Dunk vibes(スラムダンクの雰囲気)」
 さらに写真の左側には、1990年代に一世を風靡したバスケットボール漫画『スラムダンク』の最終話で描かれた名シーンが並べられた。インターハイで湘北高が王者・山王工業を撃破した直後に、桜木花道と流川楓が右手をタッチさせるイラストだ。
 最大24点差を大逆転した名作漫画と、第3クオーターの残り2分44秒で最大18点差をつけられる、絶体絶命の苦境から日本がもぎ取った勝利がダブってみえた。敗色濃厚の日本を蘇らせたのは22歳の若きガードコンビ、富永と河村だった。
 第3クオーターは最終的に、63-73と10点差に追い上げて最終クオーターにつなげた。フィンランドに傾いていた流れを代えたのは残り1分43秒で富永が決めた3ポイントシュートであり、終了直前には馬場雄大(27、レジェンズ)も続いた。
 最終クオーターに入ると富永が2本、河村が3本とまるで競い合うように3ポイントシュートを決めた。残り4分29秒で79-78と逆転に成功し、最終的にはリードを10点に広げた。ともに7本中で4本を決めた2人の成功率は実に57.1%。前半を終えた段階では11本中でわずか3本、成功率が27.3%だった日本の3ポイントシュートは、終わってみれば28本中で11本、成功率が39.3%にまではね上がっていた。
 東京五輪で日本女子代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス・ヘッドコーチ(HC、46)は日本が勝つ条件として、3ポイントシュートの成功率40%を掲げてきた。目標がほぼ達成されたスタッツを、フィンランドメディアの『hs.fi』はこう伝えた。
「日本の戦術はロングレンジからのシュートに頼る形が多い。開幕戦でドイツに黒星を喫した後に、日本の選手たちは多くの練習時間を3ポイントシュートに費やしたようだが、明らかに改善されていたリズムは試合終了が近づくにつれて強く実を結び始めた。最終クオーターが始まった時点でフィンランドが保っていた10点のリードは、日本が3ポイントアークの後方から次々にシュートを決めるたびに失われ、最終的には酷い敗戦に終わった」
 FIBAランキング3位の豪州、11位のドイツ、24位のフィンランドが36位の日本と同組になったグループEは、1次リーグを戦う全8グループのなかで「死の組」と呼ばれた。2次リーグへ進む2位以内に入るために、フィンランド首脳陣が描く青写真を説明した同国メディアの『iltalehti.fi』は、目標を達成できなかった要因を別のスタッツに求めた。
「フィンランドは沖縄で行われたグループEを、明らかに手強い2カ国とかなり弱い1カ国の2つに分けていた。もっと具体的に言えば、日本に勝つことがスシジェンギ(フィンランド代表の愛称)に課される最低条件だった。しかし、それさえも達成できなかった。18点ものリードがあれば逃げ切るかに思われたが、情熱的にディフェンスする日本人が体格のいいフィンランド人からリバウンドを奪い続けるようではうまくいくはずがない」

 

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