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18年ぶりに優勝した阪神は岡田監督を先頭にペナントをもって場内を一周した
18年ぶりに優勝した阪神は岡田監督を先頭にペナントをもって場内を一周した

「来年オレがやらんかったら負けるよ」勇退に心が揺れた阪神の岡田監督の壮絶な覚悟の上にあった18年ぶりの歓喜…大阪万博の2025年まで3連覇を目指す

 岡田監督は甲子園に赤トンボが飛んでいないという話をした。
「この時期なあ。甲子園には赤トンボが飛ぶんやけどな。おらんのよ。温暖化の影響かなあ」
 甲子園の赤トンボはペナントレースの勝負の9月を示すサインだった。
――ほんまに勇退するつもりですか?
 ストレートに聞くと岡田監督はニヤっと笑った。
「2年契約を結んでんねんで。途中で放り出すことはでけへんやん。それはあまりにも無責任やん。来年オレがやらんかったら負けるよ。角さんとの約束もあるしな。もうちょっと強くして、次にバトンを渡さんとあかんやろ」
 気力と体力が蘇っていた。
 11年もの充電期間の間に岡田監督は、何度か次期監督候補に名前をあげられながらも、再登板機会は巡ってこなかった。裏切りに失望を覚えたこともあった。チーム批判をタブーとする関西特有の馴れ合いの解説と一線を画した辛口の解説を非難されても「オレは野球の面白さを知って欲しいだけや」と、ぶれなかった。
 タイガースを心から愛していた。自らが指揮を執り、2005年に頂点に立って以来、18年もの間、優勝から遠ざかっていたタイガースを強くしたかった。あきらめずにチームを応援し続けてくれた虎党の喜ぶ顔が見たかった。
 ヘッドコーチの平田勝男氏を次期監督に推す阪神のフロント案を却下して、岡田監督の再登板を推した阪急阪神ホールディングスCEOの角和夫氏からは、18年ぶりの優勝だけでなく、常に優勝を狙える常勝軍団に阪神を変えて欲しいとのメッセージをもらっていた。“岡田の哲学”をチームに注入することで、「善戦はするが最後に勝てない」という風土、いや阪神の野球を変えてもらいたかったのである。
 その思いは岡田監督も同じだった。長く監督をするつもりはない。だが、チームを変革してから次期監督へバトンを渡すという使命がある。
 だから岡田監督は翻意した。
 若手が中心を占めるチームは、まだ発展途上にある。
 この日、岡田監督は、「力は付けていますが、まだまだ個々の選手が若いですし、伸びる要素は十分ですしまた来年から楽しみですね」と言った。
 岡田監督のチーム改革も、まだ道半ば。吉田義男氏も、故星野氏も、自らの前監督時代にも成し遂げられなかった連覇という目標もある。
「大阪万博は、いつやったっけ?2025年か。そこで阪神がアレをやって関西経済界の盛り上げの一役を買わなあかんかもな」
 2年後は67歳。
 岡田監督には前人未到の3連覇に挑むという壮大な夢がある。
 だが、その前に“アレ”の次に果たさねばならない目標がある。CS突破と1985年以来となる日本一だ。
「アレは達成しましたけど、次のステージですね。クライマックスもありますけど、そこも乗り切って最後は日本シリーズ。当然、みんな分かっていると思うんですが、とにかく1位で通過した(チームは)当然、負けられないと思う。日本で一番最後まで試合ができるように」
 そして、こう“オチ”を用意して、甲子園を大爆笑に包んだ。
「アレを決めたのは優勝までだったんですよ。日本一は言葉を決めていないんですよ。だから、もしなんかいい言葉あったら教えてほしいと思いますね」
 さっそく海の向こうから元阪神でオリオールズの藤浪晋太郎が自身のSNSで「ソレ」という言葉を提案してきている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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