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PK戦でファインセーブを連発し青森山田の決勝進出に貢献したGKの鈴木将永(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
PK戦でファインセーブを連発し青森山田の決勝進出に貢献したGKの鈴木将永(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

なぜ青森山田高の“守護神”鈴木将永はPK戦で2発を止めることができたのか…背景にあった異色のルーティン…8日に近江と決勝

 自信を込めてPK戦を振り返った鈴木は、2年生で出場した前回大会も1試合だけ出場している。1-1のまま後半アディショナルタイムに入った国見(長崎)との3回戦。鈴木はPK戦要員として正キーパーに代わって投入され、青森山田を勝利に導いた。
 この試合でも実践された一連のルーティーンは、昨シーズンから転身を遂げたFC町田ゼルビアをJ2優勝と初のJ1昇格に導いた、黒田剛前監督(53)からアイデアをもらいながら構築した。2022年秋まで青森山田を率いた黒田氏とのやり取りを鈴木はこう振り返る。
「落ち着いて、冷静に、焦らずにPK戦に臨むための準備はキーパーによってやり方が違う。そこを黒田監督と話し合いながら、という感じです」
 初優勝した2016年度大会の廣末陸(25、ラインメール青森)や2度目の優勝を果たした2018年度大会の飯田雅浩(23、東京ヴェルディ)と、青森山田のゴールマウスを守ってきた歴代守護神はPK戦へ臨む上で独自のルーティーンを持っていた。
 例えば飯田は相手のキッカーと対峙してから一歩、二歩とゴール内へ下がり、そこで正座する体勢を取ってから再びゴールライン上に構えていた。当時も話題を集めたルーティーンの意図を、飯田は「錯覚」の二文字に集約させていた。
「まずは下がって自分の体を小さく見せてから、そこからちょっと前へ出てゴールライン上に立った瞬間に、相手に大きく見せようということです」
 このときも黒田監督が話し合いに加わり、例えるなら正座戦法が編み出されていた。片膝をついて座る体勢に変わっているものの、相手のキッカーと距離を置く方法は共通している。鈴木もまた相手を「錯覚」させる駆け引きをまず導入した。
 その上で自分なりの工夫も加える。1人目は右隅、2人目は左隅と片膝をついて座る位置を交互に変えていただけではない。事前にチームの分析スタッフが用意していた、相手キッカーに関するデータも鈴木は封印していた。その意図をこう語る。
「データ通りに飛ぶのはギャンブル的なところもあるので、自分の感覚に自信があれば、それを信じて、という形で今日も止めました。ルーティーンも大事ですけど、自分が一番大事にしているのは自分のなかの感覚なので。この1年間だけじゃなくて、もっと前から積み重ねて、磨き上げてきたものが今日の結果につながったと思っています」

 

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