• HOME
  • 記事
  • サッカー
  • なぜ韓国は11億円を超える違約金が発生するにもかかわらずクリンスマン監督を解任したのか?
韓国はクリンスマン監督を解任した(写真・ロイター/アフロ)
韓国はクリンスマン監督を解任した(写真・ロイター/アフロ)

なぜ韓国は11億円を超える違約金が発生するにもかかわらずクリンスマン監督を解任したのか?

 大韓サッカー協会(KFA)は16日に開催した緊急役員会で、アジアカップで準決勝敗退を喫した韓国代表のユルゲン・クリンスマン監督(59)の解任を決めた。チョン・モンギュ会長(62)は会見で「代表監督に必要な指導力とリーダーシップを発揮していない」と解任理由を説明した。クリンスマン監督及びコーチ陣とは2026年の北中米W杯まで契約を結んでいたため、総額で100億ウォン(約11億2700万円)もの違約金が生じるという。なぜKFAは大金をはたいてまで解任に踏み切ったのか。

 世論を無視できず

 

 国内世論に押される形で、クリンスマン監督が解任された。
 KFAは15日に開催した戦力強化委員会で、優勝を期待されながら準決勝で敗退した先のアジアカップ・カタール大会を多角的に検証。クリンスマン監督の解任は不可避とした答申をまとめて、一夜明けた16日に決定権を持つ役員会が緊急開催された。
 出された結論は答申通りだった。韓国メディアの『eDaily』は役員会後に記者会見に臨み、解任理由を説明したチョン・モンギュ会長のコメントを伝えている。
「クリンスマン監督への評価を総合的に議論した結果、韓国代表チームの競争力を引き出す指導力や選手マネジメントなどの面で、代表監督に求められる能力とリーダーシップを発揮していないと判断して交代させる判断に至った。実際にアジアカップの期間中には、ファン・サポーターを失望させるようなトラブルもチーム内で発生していた。コーチングスタッフや選手マネジメント体制の見直しといった点に、早急に着手していきたい」
 同会長が言及したトラブルとは、ヨルダン代表に完敗した準決勝前夜の5日にキャプテンのFWソン・フンミン(31、トッテナム・ホットスパー)とMFイ・ガンイン(22、パリ・サンジェルマン)の間で起こった小競り合いを指している。
 夕食を早めに済ませ、卓球に興じ始めたイ・ガンインらの若手を、夕食時間をチーム内の結束を高める場にしたかったソン・フンミンが注意。意見の衝突が小競り合いに発展したなかで、ソン・フンミンが右手中指を脱臼する怪我を負った。
 クリンスマン監督も夕食会場に居合わせながら静観し、増長した態度が目立つイ・ガンインをヨルダン戦の先発から外してほしいと要望した、ベテラン選手たちの行動も実質的に無視。内紛が影響していたからか。新旧エースがともに先発フル出場した準決勝は、枠内シュートを1本も放てないままヨルダンに0-2で完敗を喫した。
 KFAは昨年2月27日にドイツ代表監督として2006年ドイツW杯で3位に入った実績があり、米国代表としてもW杯出場に導いた“名将”クリンスマン氏と契約を結んだ。契約期間は、北中米3カ国で共催される2026年の次回W杯終了までで推定年俸は29億ウォン(約3億2700万円)とされていた。
 前出の『eDaily』は15日の段階で、契約期間が残っているため、違約金を支払う可能性があることを報じていた。
「契約期間がまだ2年半も残っている。クリンスマン監督を解任した場合、この先に大韓サッカー協会が支払う違約金は、単純計算でも72億5000万ウォン(8億1800万円)以上になる。ここにクリンスマン監督が連れてきたコーチングスタッフへ支払う違約金を含めれば、合計額は100億ウォン(約11億2700万円)を超えるだろう」
 それでも、実際に弾き出された結論は解任だった。

 

関連記事一覧