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年間表彰を受けたメンバー。左から堤、寺地拳四朗、井上尚弥、晝田瑞希、那須川天心(写真・山口裕朗)
年間表彰を受けたメンバー。左から堤、寺地拳四朗、井上尚弥、晝田瑞希、那須川天心(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥はMVP授賞式で亡くなった穴口一輝氏の年間最高試合を「ファンの心の中で生き続け輝き続ける」と称えたのか?

 その井上の投稿に対し、青木が「格闘競技全体で安全管理の徹底と競技自体(ルール)を疑うことが安全と競技存続に大事。お気持ち表明と美談で済ませてはいけない話です。人が死んでますからね」と返すと、井上は「誰が間違っているとかそう言う話では決してなく今回の受賞についての誤解がありそうなので受賞の意味を時系列でお伝えさせていただきました」と追加説明していた。
 井上のスピーチには、それらの議論を整理した上で、自らの考えを表明したいとの意図もあったのだろう。
 井上から事前に相談を受けた大橋会長も、こう補足した。
「(事故が起きた試合を年間最高試合に選出したことに)賛否両論はあると思うんです。いろんな意見があって当然。そういうことが今後ないように100%無理でも、限りなく事故がないように(100%に)近づける努力をしていく必要がある。難しいが、ボクシング界代表の挨拶として(尚弥がそれを)伝えた」
 JBCサイドは、今回の事故が起きた原因を特別調査委員会を立ち上げて検証し、今後の再発防止対策について議論を重ねることを表明している。穴口氏は最終ラウンドを取れた勝利できるポイントをキープしており、ラウンド間の様子にも異常がなかった。10ラウンドの終了間際に4度目のダウンを喫したが、すぐに立ち上がりファイティングボーズを取った。止めるのは難しい試合であり、試合後の措置についても、救急車がすぐに契約病院に搬送され、脳外科医が2人待機しており、タイムロスなく開頭手術が行われた。だが、試合前のトレーニングの過程や体調、減量の影響も含めて再検証しなければならない部分も多く残されている。試合運営、健康管理を司っているJBCは、今回の事故を年間最高試合という美談で終わらせるつもりはない。
 当事者の堤も初めて公の場所に姿を見せた。主催者は堤の心情をおもん張り、「出席しなくてもいいのでは?」と打診したが、堤は気丈にも表彰式に出席してメディアの取材にも応じた。
「いろんな意見が出ているが、この試合を選んでくれてよかった。この試合でないのならどれが年間最高なのとみんなが迷う。そのくらい圧倒的な内容だった。試合後の事は関係なく、試合内容、30分だけを見ると、お互い持ち味を全部出した。やった僕にしか感じられないこともある。穴口選手は本物のボクサーでした。悔やまれるのは、今日、この日、(穴口氏と)一緒にいれなかったこと。それだけが悔やまれる。心よりご冥福をお祈り申し上げます」
 青木が火をつけた年間最高試合論議に触れた上で、そう言葉を絞り出した。

 

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