パリ五輪体操男子団体で日本が最終種目の鉄棒で大逆転の金メダル(写真・ロイター/アフロ)
パリ五輪体操ニッポン奇跡の逆転金メダルは中国の鉄棒2度落下だけが理由ではなかった…わずか0.532点差は「着地減点の積み重ねの差が生んだ必然」と元オリンピアンが指摘
だが、5種目目の平行棒で萱が、14.733点、岡が14.866点、3人目の谷川がノーミスで着地を決めて14.766点をマークして日本は暫定2位に浮上。最後の鉄棒に望みを託したのである。
畠田氏は、日本と中国のわずか0.532点の差を生んだ決定的理由をこう指摘した。
「着地のミスの少なさです。特にゆかとつり輪での着地の減点差が大きかったのです。ゆかでは、日本の萱、橋本、岡の3人が、ほぼ着地を止めましたが、中国の3人は動いていました。着地減点は0.1、0.3、0.5…と細かく分かれていて厳しく見られるようになっていますが、このゆかのE得点だけで1点差はありました」
さらに畠田氏は、つり輪でも着地の減点で「0.5差はあった」と見ている。この時点で3.133点差だったが、もし中国に着地を決められていれば、さらに差を広げられていたことになる。
「きめ細かな演技を徹底するのが日本の長所です。最後の鉄棒でも2度の落下がクローズアップされていますが、ここでも中国は1人目の肖若騰が着地で膝をつきかけて0.5以上の減点となり、あとの2人も減点をされています。対して日本の杉野、岡、橋本の3人の減点は0.1と最小限に食い止めています。総合力で言えば中国がやや上でしょう。でも中国は中国、日本は日本の良さがあり、どこで実力差をつけるのかということが重要で、日本がずっと意識して続けてきた着地への取り組みが、この五輪の場での積み重ねとなって最後の逆転劇につながったのだと思います」
勝利の女神は細部に宿るという。中国のミスによって巡ってきた日本の逆転劇は奇跡ではなく必然だったのかもしれない。