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電撃引退を決めた田中恒成と畑中会長
電撃引退を決めた田中恒成と畑中会長

「右目の光を失った。怖かった」元4階級制覇王者の田中恒成が失明の恐れのある「網膜剥離」で29歳で電撃引退…「最後の1試合が叶うなら井上拓真と戦いたかった」

 そして最初の4階級制覇への挑戦となった井岡戦の敗北はボクシング人生の転機となった。
「試合の直前に目が悪くなり、負けて自分の中で崩れていくものがあった、試合中、凄く読まれているな。やりたいことすべてにその感覚があった。初めての経験でそれがなんだったんだろう、とずっと考えながら1年ボクシングと向きあった」
 その井岡戦の後に若手にスパーを申し込まれた。
「オレも踏み台にされるのか」
 今までと違う怖さがあったが、そのスパーでは相手の動きの先がすべて読めたという。井岡戦の敗北が「人として変わるきっかけになった」。心に決めたリベンジは果たせなかったが「負けたときから一番尊敬し一番好きなボクサーです」と明かした。
 東京五輪で銅メダルを獲得した兄の亮明さん、そして3歳からトレーナーとして支えてくれた父の斉さんへの感謝の気持ちも伝えた。
「父は空手を始めた3歳の時から約30年。何があってもどんなことを言われても一切ぶれずに僕の人生をかけてくれた」
 この時ばかりは言葉に詰まった。
 父は自分の足を骨折した時や、田中の祖父にあたる父の父親が亡くなったときにも練習を休まなかったという。
 果たせなかった夢はある。
「5階級制覇だったり、自分で立てた目標はたくさんあった。そこに悔しい思いは大きくある。団体統一戦や海外へもいきたかった」
 田中が敗れたカフは7月にスーパーフライ級で最強と目されるWBC世界同級王者のジェシー“バム”ロドリゲス(米国)と統一戦のリングに上がる。もし田中が防衛に成功していれば、その米国のリングに立っていたかもしれない。
 そしてギリギリまで模索したラストマッチ構想についても明かす。
 「最後の1試合が叶うなら井上拓真と戦いたかった」
 アマチュア時代からしのぎを削った同じ1995年生まれの同期のライバル。実は、前代未聞の2日間興行で、田中が王座を陥落する前日に井上拓真も堤聖也(角海老宝石)に判定で敗れてWBA世界バンタム級王座を失っていた。田中は自らが防衛に成功していれば、リング上から「おまえは何やってんの?戦うさまがかっこよくなかった。これで辞めんなよ」と伝え、対戦を呼び掛けるつもりだったという。
「辞めそうだと思ったんでね」

 

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