
なぜ西武のドラフト2位ルーキー渡部聖弥は存在感を示せているのか…新庄日ハムを撃破する“逆転打”…綿密なデータ活用
もっとも、渡部聖自身は特に打率に関しては気にしていない。逆に「考え過ぎちゃうのが、自分の悪い癖なので」と笑顔でこう語っている。
「相手ピッチャーのデータも増えてくるし、自分のダメなときの傾向というのも増えていくなかで、やはり情報が渋滞してしまうというか、情報が増えすぎると頭のなかで整理が追いつかなくなる。頭だけで考えちゃうとなかなか体が動いてこないので、逆にフレッシュな感じでもっと(打席に)立てれば、というところもあります」
渡部聖には、昨シーズンの武内夏暉(23)に続く西武勢の新人王獲得の期待もかかってくる。14日に完投勝利を許した右腕・達孝太(21、日本ハム)、昨秋のドラフト会議で西武が1位で指名するもくじで外した宗山塁内野手(22、楽天)らライバルは多い。
さらに23日に京セラドーム大阪、24日には横浜スタジアムで開催されるオールスター戦に、渡部聖はファン投票及び選手間投票で、宗山は選手間投票でそれぞれ出場する。今シーズンのルーキーで選出されたのはこの2人だけだ。
しかし、渡部聖の視線はまったく異なる次元へ向けられている。
「新人王というよりは、チームとして勝ちたいですね。連敗が続いてあまりいい流れじゃなかったので、今日を次につながるいい勝利にしていきたい。やはり勢いに乗ればみんな打てると思うので、その起爆剤というか、誰が打っていくのか、だと思うので。そういう起爆剤に自分がなって、もっと打線を引っ張っていけたら」
日本ハムに大敗した前夜で79日ぶりに借金生活に入っていた西武は、一夜で42勝42敗1分けの勝率5割に戻した。苦手だった山﨑の前に敗れていたら、オールスター戦を前にして、借金がズルズルと膨らみかねない状況にあった。
「とりあえず自分のヒットでつなげられて、相手のミスもあって結果的に3点が入って逆転できた。(借金が増えるのとでは)まったく変わってくると思うし、その意味でも本当に大きな一打だったと思っています」
チーム防御率2.55はリーグ3位と踏ん張っているものの、チーム打率.230とチーム本塁打35本は5位、総得点220は最下位と貧打が課題の西武で、身長177cm体重88kgとマッチョなボディに無限の可能性を秘めた渡部聖の存在がますます大きくなっていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)