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阪神の岡田監督は今やオリオールズのブルペンの切り札となった藤浪晋太郎の米移籍も了承した(写真・AP/アフロ)
阪神の岡田監督は今やオリオールズのブルペンの切り札となった藤浪晋太郎の米移籍も了承した(写真・AP/アフロ)

【緊急連載4】15年前とは“変わった”岡田監督…球団が決めた藤浪晋太郎の米移籍を了承し“2005年V戦士”赤星憲広氏、鳥谷敬氏、井川慶氏、桧山進次郎氏らの入閣案も引っ込めた

 阪神を18年ぶりの優勝に導いたのは15年ぶりの“再登板”となった岡田彰布監督(65)だった。緊急連載で知られざる物語に迫る。

 「狂気な人でなければペナントレースは勝てない」

 

 6月16日に梅田で行われた阪急阪神ホールディングス(HD)の株主総会。タイガースの親会社の株主総会はファンの心理を示す“鏡”のような場所だ。キャンプイン前に矢野燿大監督が1年限りの辞任を表明し、開幕から9連敗した昨年は、大荒れの“批判の嵐”。だが、一転、首位を走っていた今年は“無風”だった。
 西宮市内在住という男性が最初の質問で「我が阪神タイガースの監督に岡田さんを招聘いただき、心より御礼申し上げます」と感謝を述べ、ここ数年のドラフトの成功を称賛する株主まで現れた。会場は満員。過去のタイガースの球団幹部を何人も見かけた。偶然、旧知の元球団幹部に会った。
「岡田さんをもっと早く監督にすべきだったのでは?」
 そう聞くと「ほんまそうやな」とうなずいた。

 岡田監督の再登板が幻に終わり、2016年から金本知憲氏が3年、矢野氏が4年指揮を執った。金本監督は4位、2位、最下位、矢野監督は、3位、2位、2位、3位。優勝争いはしているが、頂点を手にするための何かが足りなかった。岡田監督のような“勝負師”のエッセンスが必要だった。
 だが、球団フロントの動きは違っていた。2軍監督を長く務め、育成&調整の指導者タイプの平田勝男2軍監督の昇格案で1本化されていた。オールスター期間中に平田監督就任の記者発表の準備まで進めていたことは、あまり知られていない。
 だが、いつまでたっても藤原崇起オーナーからの最終GOサインが出ない。藤原オーナーは最高権力者である角和夫会長兼グループCEOの“意中の人”が岡田監督であることがわかっていた。球団は分厚いレポートで平田監督擁立の理由を阪急サイドに提出し「育成と継続」を強調したが、優勝するための説得力に欠けていた。本来であれば、藤原オーナーと角CEOがコミュニケーションを深く取り、意見のすり合わせをすべきではあったが、藤原オーナーは積極的なアプローチをしていなかった。そのため阪神の次期監督問題は宙ぶらりんのまま1か月以上が過ぎた。
 9月に入っても何の連絡もなく岡田監督も苛立ちを隠せなくなっていた。当然、球団が推し進めていた平田監督案の話も耳に入っていた。
 そもそも、なぜ球団は、そこまで岡田監督の再登板を避けようとしていたのか。

 現場を離れている期間が長く、金本、矢野体制で7年間積み上げた方向性の「継承」に疑問があることと、前監督時代に球団サイドが疲弊した“トラウマ”だという。勝つために岡田監督は妥協しなかった。専属広報は何人か変わり「トレーナーを全員変えよ」と要求したこともある。外部の筆者から見れば理不尽な要求は何ひとつなかったが、球団がコントロールできない指揮官は事なかれ主義の彼らからすれば招かざる人だった。
「ある意味、狂気な人でなければペナントレースは勝てないのかもしれないね」
 前出の元幹部はそう語ったが、そういう発想も球団にはなかった。

 

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