
RIZIN「男祭り」朝倉未来の復活劇はRフェザー級新王者が批判したように本当に「つまらなかった」のか…鈴木千裕の長所を消す戦略的なスタイルでドクターストップに追い込むTKO勝利

「うれしそうにしている人がたくさんいてオレも嬉しかった」
歴代のRIZINファイター、そして榊原信行CEOまで「10周年」と書かれたふんどし一丁で登場した驚愕のオープニングセレモニーでは、朝倉が登場すると大歓声が東京ドームに響いた。朝倉のための東京ドーム大会だった。
その声に「ちょっとくるものがあった」という
「プレッシャーはないと思っていたが歓声を聞くとプレッシャーを感じた。ファンに対して強さを証明してあげたいというのがあったので声援を聞いた途端に。自分のためにとは言うものの、応援を聞くと“みんなのために”となってしまう。次からは歓声無しでお願いします」
ジョークを交えて朝倉が涙の理由をそう説明した。
一方、左目の上を縫合する処置を受けた鈴木は、腫れあがった患部に大きな絆創膏を貼ってインタビュールームに現れた。
「最後に勝ちますよ…もう一回。試合?今回は自分との戦いだったのであまり覚えてないっすね。きょうは負け、そういう日ですよ」
懸命に言葉を絞り出した。
「もっともっと勇気と感動を渡すのがオレの使命なんですけど、ちょっと出なかったですね」
3月30日の香川でのカルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)戦に判定で敗れ、右足を痛め、鼻の骨を折った。この時点で朝倉の対戦候補から脱落したが、マッチメイクが難航した末、満身創痍の鈴木に白羽の矢を立てざるを得なくなった。
鈴木は「治っちゃいました」と4月9日のカード発表会見で強がったが、治ってはいなかった。この日は右足の動きは明らかにおかしく下半身に力が入っていなかった。精彩を欠いたパンチの理由は、その怪我の影響だった。
だが、鈴木は言い訳をしなかった。
「みんな100%じゃない。それなりに色々と背負っている。それも含めて勝負。土俵にあがった時点で言い訳はできない。できるだけ100%の状態に持っていって勝負を挑んでいるんでしょうがないじゃないですか」
鈴木は漢だった。
ファンの応援に感謝の意を伝え、「これは試練。また25歳。まだまだ強くなりますよ。心が折れない限り、真の負けではない」と言い聞かせた。