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井上尚弥がまさかのダウンを喫した(写真・山口裕朗)
井上尚弥がまさかのダウンを喫した(写真・山口裕朗)

「井上尚弥はクセを見破られていた」なぜモンスターは衝撃のダウンを奪われカルデナスに大善戦を許したのか…「ガードが下がるのはわかっていた」初めて露呈した“弱点”

 中谷氏は2023年4月にWBA世界ライト級王者のガーボンタ・デービス(米国)が“問題児”ライアン・ガルシア(米国)からダウンを奪ったパターンに重ねた。ま
「1ラウンドと2ラウンドのダウンまでは楽勝ペースに見えました。バンバンと打って、相手がひるみ、亀になったところに、2度、3度とさらにバンバンと追い打ちをかけてペースをつかむパターンです。でもカルデナスはタフで勇気があり下がらなかった。井上選手は左フックが好きなんでしょう。ガルシアのように武器はそれだけではありませんが、左を合わせて打つことを得意としていて条件反射的に出る。左から踏み込んでいきますが、距離が近いと、上体に力を入るのでどうしても体が開くんです。そのクセとタイミングをカルデナスは狙っていました。かなりそのトレーニングを繰り返してきたんだと思います」
 井上も、試合後に「一番感じたのは、凄い対策をしてきたということ。映像で見ていたカルデナスとまったく違った。2、3倍は強かった」と口にしていた。
 だが、ここから巻き返せるのが、モンスターの凄みだ。
 コーナーでの父・真吾トレーナーのアドバイスも的確だった。
「しっかりとカバーを。左を振ってくるからな、一発だけに気をつけて。小さく、小さく。コツコツね」
 3ラウンドからジャブから組み立て直した。カルデナスもジャブから右のストレートで応戦。ずっとカウンターを狙い続けてきたが、決定的な被弾は防ぎ、ボディを織り交ぜながら、6ラウンドには怒涛の連打でロープに釘づけにした。7ラウンドには、また左フックを浴びるシーンもあったが、右ストレートの4連打で、ついにダウンを奪い返す。カルデナスは、ボディブローのダメージの蓄積があったのか、コーナーを背にしゃがみこんだ。
 そしてフィニッシュは8ラウンド。距離を詰めて、右フック、右アッパー、左ボディ、右ストレートのコンビネーションブローで、ロープへ吹っ飛ばすと、炎の猛ラッシュ。右アッパーが入り、連打をまとめたところでレフェリーが間に入って試合をストップした。ロープを背負いながらも一発逆転のカウンターを狙い続けていたカルデナスは、「まだ大丈夫だ」とレフェリーに抗議したが、逆に「君を救うために止めたんだよ」と諭されていた。
 井上は、赤コーナーの一段目のロープに上がって、右手で胸を何度か叩き、総立ちになったファンの大声援にこたえた。
「みなさん、この試合を見ていただき、殴り合いが好きだと証明できたと思います。凄く楽しかったです」
 それが第一声。
「非常にタフな相手でした。オッズ的には、かなりの差があったが、相手は必死に倒しにきていた。ボクシングは甘くないと痛感しました」
 反省も口にした上でこう続けた。
「理想とする綺麗な終わり方はできなかった。でもカルデナスはいい選手で勇敢に打ちあってくれたので白熱したエキサイティングな試合ができたと思います」
 一方でカルデナスは、「パワーがそれほど凄いとは思わなかった。過去にもっと強いパンチを打たれたこともある。ただ、彼の凄いところは6、7、8発と連打ができる部分。それに圧倒された」と評した。

 

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