• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • プロボクシングJBCが策定した「トランス男子ルール」は大きな一歩なのか、多様性の時代に適応できていないのか…真道ゴーのプロテスト受験は見送ったが準公式試合は認め“門戸”は開く
トランスジェンダー男子ボクサーの真道ゴー(右)が願っていたプロテスト受験は却下されたが、準公式試合は認められた。左は本石会長(昨年の資料写真)
トランスジェンダー男子ボクサーの真道ゴー(右)が願っていたプロテスト受験は却下されたが、準公式試合は認められた。左は本石会長(昨年の資料写真)

プロボクシングJBCが策定した「トランス男子ルール」は大きな一歩なのか、多様性の時代に適応できていないのか…真道ゴーのプロテスト受験は見送ったが準公式試合は認め“門戸”は開く

 JBC(日本ボクシングコミッション)が性別適合手術と戸籍変更を行い男性ボクサーとしてのプロテスト受験を要望していた元世界女子フライ級王者王者の真道ゴー(36、本名・橋本浩、旧名・橋本めぐみ、グリーンツダ)の問題及びトランスジェンダー男子ボクサーに関してのルール策定についての結論を出した。過去に例がないためデータ蓄積がなく安全性が担保できないとの理由で正式な認定ルール及び真道のプロテスト受験は見送られることになった。ただ血液検査などの各種検査をクリアしたトランス男子ボクサーに限り特別ライセンスを交付し準公式試合(公開スパーリング)は認めることになった。準公式試合を重ねる中で安全性が確認された場合、公式試合を認める可能性があるという。訴えから1年以上が経過しての結論に真道陣営は困惑。これは歴史的な大きな第一歩なのか、それともジェンダーフリーに適応できていない時代遅れの保守的な決断なのか。

 「安全性の担保が第一」

 

 JBCがようやく結論を出した。
 昨年4月に元WBC女子世界フライ級王者の真道が訴えていた男子プロテスト受験の願いを受けてJBCは、トランスジェンダー男子のプロ参加の可否、認める場合のルール作りなどを含めて検討を開始。ジェンダー問題の研究者や医学者ら5人の専門家で構成された諮問委員会を立ち上げた。諮問委員会は、文献や論文を精査、検討、議論すると同時に中京大に真道だけでなく、日本スーパーバンタム級王者の下町俊貴らの男子ボクサーも呼び、運動能力テストを行い、答申を出した。答申はトランス男子ボクサーの参加を認める場合の一般ルールの策定と、真道のプロテスト受験の可否の問題の2つに分かれた。
 正式なルール化については「まだ経験、データー蓄積が不足。治験的、段階的に検討を続ける必要があるのではないか?」で意見が一致。時期早尚として見送られたが、真道のプロテスト受験に関しては、女子ボクサーとして20戦16勝(14KO)の経験と体力検査などの結果を踏まえて「テストケースとして受験資格を与えることは可能」との答申が出された。
 JBCの理事会で、その答申を叩き台に協議され、ルールの一般化については答申通りに見送ることで合意したが、真道のプロテスト受験に関しては、答申に反して認めないことになった。
 JBCのコミッションドクター、特に脳外科の専門家などから反対意見が出て、「安全性が第一。頭部の打撃に関して脳外科の立場から、まだ未知のものに踏み込むことに躊躇があった」(安河内剛本部事務局長)との理由で認められなかった。プロテスト受験を認めることは、イコール公式試合出場を認めることとなり、まだ安全性に疑問が残ったからだという。
 諮問委員会の運動能力テストでは、握力、脚力、パンチ力測定なども行われ、真道は、男子選手に劣らないどころか「脚力など日本王者の下町さえをしのぐ」数値を出したが、それらの数値と実際のボクシングの試合におけるスピード、パワーを単純に比較することは難しく、それらのデータは決定打にならなかったという。
「たとえば、井上尚弥選手の握力の数値が凄いかと言えばそうではない。数値とボクシングのスピードやパワーとは別もの」と、安河内事務局長。
 ただ門戸は開いた。
 トランス男子ボクサーを「出生時に割り当てられた性別が女であり男としての性自認を公にし、かつ、これがJBCに知れている男子をいう」と定義づけ、健康診断、MRI検査、テストステロン(男性ホルモン)値などをチェックする血液検査などをクリアしたトランス男子ボクサーには、特別ライセンスを与え、準公式試合(公開スパーリング)への参加は認めることになった。

関連記事一覧