• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 大橋会長が明かす井上尚弥のラスベガス逆転TKO勝利の壮絶舞台裏「安全策の判定を狙わずに倒しにいった」…2回のダウンは「ネリ戦より深くパンチが入っていた」
井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)
井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)

大橋会長が明かす井上尚弥のラスベガス逆転TKO勝利の壮絶舞台裏「安全策の判定を狙わずに倒しにいった」…2回のダウンは「ネリ戦より深くパンチが入っていた」

 プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)の米ラスベガス決戦をサポートした大橋秀行会長(60)らトレーナー陣が6日、帰国した。井上はWBA1位のラモン・カルデナス(29、米国)に2回にダウンを奪われながらも8回に逆転のTKO勝利したが、大橋会長は陣営の「判定狙いでいい」の考えを振り切りKOを狙った壮絶な舞台裏を明かした上で“弱点露呈説”を全面否定した。ダメージはなく井上は次戦で予定通りに9月14日に名古屋でWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(30、ウズベキスタン)と対戦する。

 

大橋会長が帰国した

 

 チーム井上の“ボス”が一足先に緊急帰国した。5月28日に横浜BUNTAIで行われるWBO世界バンタム級王者の武居由樹の防衛戦と、力石政法が挑むIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦に備えてのものだ。
 大橋会長は、試合後にラスベガス決戦を主催したトップランク社のボブ・アラムCEOにステーキを御馳走になった祝勝会から、40人ほど集まった井上の祝勝会のハシゴをして、ほとんど寝ずに早朝便に飛び乗った。羽田空港で、まだラスベガスに滞在している井上に代わって、取材に応じた大橋会長は、8回の逆転TKOで終わったラスベガス決戦の壮絶な舞台裏を明かした。
「2ラウンドのダウンの印象が強いと思うが、あのラウンド以外(8ラウンドまでジャッジ3人の採点は)フルマークなんだよね。試合は面白かったと思うが、僕的にはいい出来じゃなかった。もらったパンチはあの一発だけ。他は外して顔も腫れていないが、(2ラウンドには)もの凄いもらい方をしている。もし(倒れた時に)後頭部でも打ったら(もっと)効いていた。あれでも立ってくるんだから打たれ強い」
 井上は2ラウンドにキャリア2度目のダウンを喫した。至近距離から左フックを振ったが、カルデナスにダッキングで潜るようにしてかわされ、死角から飛んできた左フックが顔面を直撃。お尻からキャンバスに落ち、体をひねって両手をついた。
 大橋会長は「びっくりした。(背中越しで)何が当たったかわかんなかったが、歓声が凄かった」という。
 井上のダウンは、ちょうど1年前の5月6日、東京ドームでのルイス・ネリ(メキシコ)戦の1ラウンドに喫して以来。大橋会長は、井上から直接聞いたわけではないが、「今回の方が効いたんじゃないか。今回の方が深く入っていた。死角からね」と振り返った。
 大橋会長はジェスチャーで、通常の左フックの軌道を示しながら「こういうフックじゃなく、スイッチして正面から来た、独特のパンチ」と、そのカルデナスの左フックが特殊なパンチであったことを説明した。
 試合後、カルデナスは、このカウンターの左フックを“モンスター狩り”の作戦として狙っていたことを明かしている。
「彼が入ってくるところを狙っていた。パンチを打つ時にガードが下がることがわかっていた。打ち終わりの隙を狙ってカウンターを合わせるという作戦だった」
 井上陣営もその左フックを警戒していたという。
「もともと左フックがいいなという話をしていた。井上と正面でボクシングをしても勝負にならない。打ち終わり。一発勝ちにいくにはあれしかない。しかも強振できる。軽いパンチなら怖くないんだが」
 井上はすぐさま両膝をついて座り、セコンドに右手をあげて「大丈夫だ」と合図。カウント「8」まで回復を待ってから立ち上がった。
「ギリギリ、カウント8で待ったけど、(立ち上がるとき)ふらっとしないか心配した」
 大橋会長の懸念をヨソに井上はしっかりとした足どりで立ち上がり、カルデナスの追撃を許さなかった。
 そのインターバル。父の真吾トレーナーが「大丈夫か?」と聞くと、井上は「今2ラウンドだよね?」と返答した。
 まだダメージは残っていたのだ。
 父はこう指示した。
「しっかりカバーを。左を振ってくるからな、気をつけて。小さく、小さく」
 井上もこの時の心境をこう語っている。
「非常に驚いた。(でもダメージは)足には来ていなかった。落ち着いてポイントをピックアップしていこうと思った」

 

関連記事一覧