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阪神が1点に泣き横浜DeNAに0-1惜敗
阪神が1点に泣き横浜DeNAに0-1惜敗

なぜ阪神及川雅貴の「防御率0.00」神話が崩れたのか…横浜DeNAに狙われた「1.37秒」かかったクイックモーションの弱点

 代走は石上。積極走塁を掲げている横浜DeNAが仕掛けてくることは十分に予想できた。打席にトップの桑原を迎えて及川は、まず牽制球を投げた。
 ボールから入った後、今度は3球続けての牽制球。横浜DeNAベンチの動きを察知していたのだろう。そしてカウント2ー0からの3球目にスタートを切られた。警戒していたにもかかわらず二塁はセーフ。藤川監督はリクエストを求めたが、判定は覆らなかった。この時の及川のクイック投球のタイムは1.37秒だった。
 名将の故・野村克也氏が、阪神の監督時代に選手に配った「ノムラの教え」の中には、「クイックの時間が1.30秒以上だと無条件で走れる」とある。盗塁阻止は、バッテリーの共同作業。投手の投球時間に1.30秒以上かかれば、走者がよほどスタートに遅れない限り、いくら捕手がストライク送球をしても、計算上セーフになるのだ。及川は、しっかりとタメを作って投球するため、クイックが遅い。
 データ野球を標ぼうしている横浜DeNAに間違いなくその弱点を狙われたのだ。 
 バッテリーも及川のクイックが遅いという弱点を自覚しているからこそ執拗な牽制球で警戒したのだが、阻止することはできなかった。クイックを早くして球威やキレが落ちれば、今度は肝心の投球に影響する。悩ましいところだ。今後も及川をブルペンで起用するのであれば、この課題の修正には取り組まねばならないだろう。
 及川は動揺したのか、桑原を歩かせ、続く牧の初球に外角へ投じた143キロのカットボールをセンター前へと弾き返された。
 牧は「チャンスだったので初球からいこう」と考えていたという。
 四球の後の初球狙いはセオリーといえばセオリー。バッテリーに慎重さは必要だったのかもしれない。開幕から17試合続いていた及川の「防御率0.00」の神話がついに崩れた。
 打線も沈黙した。6回には先頭の中野が二塁打で出塁したが、森下、佐藤、大山のクリーンナップが凡退。森下は16打席、大山は19打席連続無安打である。
 7回にはジャクソンが変化球を制御できなくなり、3つの四球で二死満塁のチャンスをもらった。だが、中野が代わった伊勢のフォークをひっかけてセカンドゴロ。あと1本が出なかった。
 藤川監督は、「また次ですね」「また明日ですね」と繰り返した。
 試合後、誰もいなくなるまでベンチにずっと座っていたのが及川だった。その胸に去来していたものは何か。その悔しさが明日への糧になる。今日16日は、当日移動で甲子園に戻って2位の広島との首位攻防戦。巨人に3タテを食らわせ、阪神に0.5差と迫って、勢いに乗るカープにエースの村上をぶつける。

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