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近江の「4番・投手」山田陽翔が7回に満塁弾。自らのピッチングを援護してチームを8強へ導いた(写真・日刊スポーツ/アフロ)
近江の「4番・投手」山田陽翔が7回に満塁弾。自らのピッチングを援護してチームを8強へ導いた(写真・日刊スポーツ/アフロ)

投手?野手?それとも二刀流?近江を8強に導くドラ1候補・山田陽翔の満塁弾&9奪三振にスカウトの間で悩ましい議論が起きる

 

全国高校野球選手権の3回戦、近江対海星が15日、甲子園球場で行われ、近江はドラフト候補である山田陽翔(3年)が「4番・投手」で出場し、投げては7回を4安打9奪三振1失点、4番としては7回に満塁本塁打を放つ活躍で7―1の勝利に貢献、チームを2年連続のベスト8へ導いた。甲子園通算奪三振は、昨夏からの3大会で98となり、江川卓氏(作新学院)の92、松坂大輔氏(横浜)の97を超え歴代7位。プロでは果たして投手か、野手か、それとも二刀流か。スカウトの間では“二刀流スター”の将来性を巡って議論が起きている。

「山田投手1人にやられる真逆の展開に」と海星・加藤監督

 敗れた海星の加藤慶二監督の言葉がすべてだろう。

「ピッチングもバッティングも好きなようにはさせないと思って選手を送り出しましたが、山田投手1人にやられる真逆の展開になってしまいました。スター性がある上、勝負どころで一番素晴らしいボールを投げることができる素晴らしい投手でした」

 投げては7回9奪三振の1失点。打ってはグランドスラム。海の向こうの”二刀流スター”顔負けの“翔(ショウ)タイム“を見せられては“最敬礼“も仕方があるまい。

 「投手・山田」は、2回に二死から機動力を絡められて先制点を奪われるも追加点は許さない。勝負どころを知っているインサイドワークの素晴らしさも山田の持ち味である。チームが5回に2-1と勝ち越してくれた。「点を取った次の回」の重要性も重々理解している。

 海星の1番打者から始まる、その6回に圧巻の3者連続三振。そして、ピンチになると、さらにギアチェンジできるのが山田の強みだ 7回に連続安打を打たれ一死一、二塁のピンチを迎えた。

 ここで先制タイムリーを打たれた牧真測を迎えるが、この回、ストレートのスピードは、この試合マックスの148キロをマークしていた。牧に対して丁寧に低めへボールを集めた。2回に浮いた変化球をライト前におっつけられた先制タイムリーが頭にインプットされているのだろう。いわゆる「長持ち」といわれる長いセットポジションを織り交ぜながら揺さぶりをかけて、最後はアウトローに145キロのストレート。牧は微動だにできなかった。

 二死となって海星は代打の柿本彩人を左打席に送った。主将で予選から代打率10割の切り札である。山田は、徹底して外角へツーシーム。データだったのか、感性だったのか、長打を避ける基本だったのか。全7球中6球がツーシームという配球だった。決め球も外角低めへ落とすツーシーム。大きな構えの柿本のバットは空を切った。

「ピンチとそうじゃない場面でオンとオフがしっかりできた。メリハリのきいた投球ができていたのかなと思います」

 ギアチェンジを意識的にやって、しかも結果を出しているのが凄い。

 ピンチの後にチャンスありーー。 1点差の緊迫ゲームにケリをつけたのは4番打者山田のバットだった。

 7回二死満塁。「チームメイトが満塁で回してくれた。4番の仕事をしっかりしなければいけないなという思いを持って」打席に入ったという。警戒する海星のエース宮原明弥が外角、低めとボールを続けカウント2-0からの3球目。外角高めに甘く浮いた142キロのストレートに最短距離からバットを出して思いきり振り抜くと打球はレフトスタンドへ舞い上がった。

「角度はいい形で上がった。あとは風に乗ってくれれば」

 山田の今大会1号が勝負を決める劇的満塁弾。右手の人さし指を天に突き上げながらダイヤモンドを回った山田は、興奮のあまり、その時のことを「覚えていない」という。

「みんなが打たせてくれたホームラン。ベンチでみんなが迎えてくれてうれしかった」

 チームスローガンは「一丸」。決してワンマンチームではない。呆然として汗をぬぐった海星のエース、宮原の表情が印象的だった。

 

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