
伝統の一戦で無死満塁を脱した巨人・田中瑛斗の“バット粉砕シュート”はなぜわかっていても打てないのか
田中は2017年に柳ヶ浦高校からドラフト3位で日ハム入りした。柳ヶ浦高校時代の監督が南海で活躍した定岡智秋氏。巨人で活躍した定岡正二氏の兄だ。だが、2020年の右肘の手術や、2023年の右肩痛などで、なかなか1軍で結果を出せず、昨年オフの現役ドラフトで巨人に移籍した。日ハム時代は、シュートを売り物にしていたわけではなく、どちらかと言えば、スライダー系の投手だった。だが、阿部監督らがキャンプでその特殊球に目をつけ、日ハム時代はファームでも主に先発をしていた田中を中継ぎ起用したことで覚醒した。
では、右打者は、田中の“バット粉砕シュート”にお手上げなのか。前出の評論家は、その対策について、こう提言した。
「シュート対策のひとつは打席の前に立ち、変化の少ないポイントでさばくというものがあるが、クリーンナップはプライドが許さないだろう。技術的にはやや体を開いて、腕をたたみ、バットコントロールを意識するしかないが、外のスライダーに対応できなくなる。追い込まれるまでは、シュート1本に絞れるが、追い込まれるとスライダーがあるので難しい。インコースの見極めを徹底して、力まずにファウルで粘りながら失投を待つしかない。シュート投手には逆球になるとそれが絶好球になるというリスクもある。また球威がなくなれば対応はできる。ただ田中の場合、球威もコントロールも素晴らしいので簡単ではない」
監督通算100勝目となった阿部監督の采配も冴えた。
3回以降立ち直っていた山崎に代えて、7回に代打ヘルナンデスをコールするとレフトへ同点アーチ。延長11回にも浅野に代えて代打に送った笹原がショートへの内野安打で出塁して勝ち越し機につなげた。
ただ4番のキャベッジが3回無死満塁、5回一死一塁、7回一死二、三塁のチャンスに3三振。三塁に走者を置いた場面では、いずれも高めのボールゾーンを攻められて、バットが空を切った。もう攻略パターンが出来上がっている。岡本の長期離脱の穴は、あまりにも大きく、今日のヤクルト戦からは、また4番を誰にするかの再考を余儀なくされることになった。
一方の阪神はブルペンの駒不足に泣いた。この日、桐敷が左上肢の筋疲労で出場登録が抹消された。結果を残せなかった富田、ビーズリーも2軍落ちとなり、代わりに岩貞、椎葉、木下の3投手を昇格させた。
7回から及川、石井、岩崎、湯浅とつないだが、11回のネルソンが誤算だった。本来であれば、桐敷に任せるはずの1イニング分、人が足りなくなり、ネルソンを連投させたが、二死二塁で、「打つと決めて強い気持ちで、後ろにも(吉川)尚輝さんがいましたので、とにかく必死にいきました」という門脇に変化しなかったチェンジアップを前進守備のライトの頭上に持っていかれた。
ネルソンはフィリーズ時代に2022年のアストロズとのワールドシリーズで登板経験のあるパワーピッチャー。確かに150キロを超えてくるストレートには力があるが、変化球に制球力がない。前日のゲームは、雨中で足元もぬかるんでいたため、その部分を差し引いて、藤川監督は連投させたのだろうが、環境が整っていても、変化球は、コントロールできていなかった。前出の評論家は「いくらストレートに力があってもそれ1本では対応される。変化球はほとんど浮いていた。今の状況のままでは勝負所で使うのは難しいのでは?」という見方をしていた。
桐敷が戻ってくるまで、この足りない1枚をどう埋めていくかという問題に藤川監督は頭を悩ませることになるだろう。