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武居由樹が衝撃の127秒TKO勝利(写真・山口裕朗)
武居由樹が衝撃の127秒TKO勝利(写真・山口裕朗)

あり得ない!3度ダウンの衝撃127秒TKO…なぜWBO王者の武居由樹はあえて那須川天心の名前を出さず「もう1本ベルトが欲しい」と発言したのか…WBA休養王者の堤は対戦を熱望

 ただ天心が世界王者になっていなければその計画も宙に浮くことになる。群雄割拠のバンタム級戦線の中で目を輝かせたのが、リングサイドにいたWBAの休養王者の堤だ。リング上で武居が「もう1本ベルトが欲しい」と発言した瞬間に、カメラに向かって満面の笑みで、ファイティングポーズを作り、パンチを繰り出した。堤がSNSで武居に統一戦を呼び掛け、武居もそれに返答するというやりとりがあっただけに、その発言は大歓迎だった。

「僕が(リングに)上がった方が良かったんですかね(笑)。そういう風に応えてくれているんだったらこっちとしてはめっちゃありがたい。僕も武居選手も、やんないといけない試合があるから、(互いに)それを怪我もせずにちゃんとクリアすれば、いいタイミングでできるんじゃないか。楽しい感じになってきた」

 左目の手術をした堤は、現在休養王者。暫定王者から正規王者に昇格したアントニオ・バルガス(米国)に、7月にこの横浜BUNTAIで、比嘉大吾が挑戦する予定になっている。堤は11月に、その勝者と王座統一戦を戦うことが義務づけられていて、武居も、9月に指名試合をクリアせねばならず、互いに条件付きではあるが、堤はタイミングを含めて対戦ラブコールを送ったのである。

 堤は、武居の1ラウンドTKO勝利に「驚いた」という。

「相手は強いと聞いていた。腹が効くんじゃないかと思っていた。ボディに最初入って、あの同じ軌道からすくう感じの左ストレートが綺麗に内側に入った。ストップが遅いと思ったくらい。1回目のダウンでダメージを食らっていた。あとは何をしても倒れるだけのダメージパンチを、あの時間で(打ち)、倒しにいこうと言って、倒せるのは凄い。めっちゃいい防衛戦でしたね」

 武居に勝つイメージは?と聞くと「あまりまだ考えてはいない。リスクは高い選手。今日の試合でも隙というか…そういう部分はあるにはある。でもそれを無視するくらい強かった。対戦相手として怖さがある選手のイメージはより強まった」と珍しく強気ではなく慎重なコメントを返した。

 そして堤は、4人の王者の立ち位置に武居の衝撃勝利で変動が起きることを予測した。

「結構、僕は4人の下の方に入っちゃたんじゃないか。オレは(前戦で比嘉と)ドローだし、がんばらないとね」

 米老舗雑誌「ザ・リング」は、パウンド・フォー・パウンドランキングと共に、各階級のリング誌王者や独自ランキングを発表しているが、現在のバンタム級のランキングは、王者が不在で、1位中谷、2位西田、3位堤、4位武居となっている。堤が予測するように武居が強烈なインパクトを残したことで4人の王者の序列が変動することは間違いないだろう。

 だが、武居はビッグマッチの前にメディナという難敵に勝たねばならない。メディナは2023年8月に大阪で行われたIBFの挑戦者決定戦で西田に0-3判定で敗れたが、その後、再起すると、すべてKOで3連勝し、昨年11月には、無敗のホープのアレクシス・モリナ・アギーレ(メキシコ)をボコボコにして5ラウンドTKO勝利でWBOラテンアメリカバンタム級王座を獲得している。天心のスパーリングパートナーとして複数回来日しているが、「来る度に成長している」との評判のファイターで、武居は、最強の挑戦者を迎え討たねばならない。

「自分はいつもでチャレンジャーの気持ちでいる、またまだ上を目指していく」

 会見の中で八重樫トレーナーが「フック系、アッパー系のパンチしか出していない。そこにストレート系が入ってくると合格点」と、注文をつけて、武居が「はい」とうなづき恐縮するシーンがあった。そして2人は、会見から写真撮影に舞台設定が変わるときに、イスや机の移動を手伝っていた。この最高にして最強の師弟コンビであれば「まだまだ上」の夢を実現するに違いない。

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