
WBC&IBFバンタム級統一戦を前に中谷潤人の「打たれ弱いのか」論争…“ナニワの仕掛け人”への秀逸アンサーと2人の王者が揃って無視した井上尚弥戦
西田にもそこを直撃した。
「ボディ?色々と散らしていかないといけないですからね」
不利予想を覆してIBFのベルトを獲った昨年5月のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦もボディ攻撃が突破口となっていた。
今回の前評判も西田が圧倒的に不利。英大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」の予想オッズは、中谷勝利が1.08倍でほぼ元返しで、西田勝利が7倍で1対7となっている。だが、西田はプロ3戦目で世界戦経験のある大森将平(ウォズ)に挑み判定勝利、4戦目でWBOアジアパシフィックバンタム級王座をかけて元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(志成)を敵地の沖縄で判定で下すなど、ロドリゲス戦も含めて過去3度“番狂わせ”を起こしてきた。爪痕を残さず終わるつもりはさらさらない。
中谷にはこの統一戦の先にスーパーマッチが計画されている。
来年5月の東京ドームでのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)戦だ。中谷は、西田に勝てば王座を返上し、11月にも1階級上げてスーパーバンタム級でのテストマッチを挟んで、そのスーパーマッチに向かう。ある意味、負けられないプレッシャーのかかる試合。
それでも「(井上戦への)プレッシャーは特にない。今までも1戦1戦を大切にやってきた。今回も西田選手に勝つことに集中して練習をしてきた」と多くを語らなかった。
一方の西田は4月のカード発表会見では「(井上戦の)踏み台にはならないぞという気持ちがある」と対抗意識を燃やしていた。
改めて決意を聞くと「中谷選手が井上選手とやることに関してはあまり何も感じていない。中谷選手に勝つことだけを考えている」と答えが変わっていた。それだけこの1戦に集中しているという証拠なのだろう。
西田陣営は、記者会見場を隣にある東京ドームホテルだと勘違いしていて、あわてて後楽園ホールに移動したところ、たまたまエレベーターで、中谷陣営と鉢合わせとなった。「どうぞ、どうぞ」と招き入れてもらったという。
「(中谷の)ニコやかな顔を見ていると、試合を本当にできるのかと思った。リング上では2人は激しくやり合うでしょうけど、それ以外は友好的にやっていきたい」
枝川会長がそう説明するように、中谷と西田のリング外での紳士で温厚な性格もあってか、日本人同士の王者対決にありがちなバチバチした火花は散っていない。それが衝撃の結末の不気味な静けさにも思える。
今日7日の前日計量は同じく後楽園ホールで行われる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)