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センバツ準Vなど甲子園を沸かせた西武の山田陽翔が阪神の反撃を許さなかった
センバツ準Vなど甲子園を沸かせた西武の山田陽翔が阪神の反撃を許さなかった

なぜ西武はセ首位の阪神に3連勝できたのか…8回一死満塁の大ピンチに佐藤輝明を牽制で刺したサインプレーの裏舞台と甲子園スター山田陽翔の覚醒

 西武が12日、本拠地ベルーナドームで阪神に4-1で逆転勝ちし、今季で20回目を迎えた交流戦で、阪神との同一カード3連戦で初めて3連勝した。初回に森下翔太(24)の11号ソロで先制されたが、2回に“魚雷バット”を使用する長谷川信哉(23)のタイムリーで逆転。8回一死満塁のピンチは、4番手の山田陽翔(はると、21)がピックオフプレーからのけん制で一塁走者の佐藤輝明(26)をアウトにして切り抜けた。なぜ西武は、12球団で唯一勝率が6割を超えていたセ・リーグ首位の阪神にすべて逆転で3連勝できたのか。

 古賀から山田へ「頭に入れておいて」

 絶体絶命の大ピンチを一瞬で歓喜に変えた。
 3点リードの8回から登板した西武の4番手、山田が一死から2番・中野拓夢(28)に右前打を浴び、森下、佐藤に連続四球を与えた。一発が出れば逆転される大ピンチ。ライトスタンドを埋めた阪神ファンの大声援がさらに高まった状況で、大山悠輔(30)へ投じた初球のカットボールも外角低目へ外れてしまった。
 マウンド上の右腕と、右打席に立つ5番打者との一騎打ちにすべての視線が注がれているなかで、西武は阪神に生じた隙を見逃さなかった。
2球目へのセットポジションに入った山田が、素早いけん制を一塁へ送る。それまで一塁ベースの後方で守っていたタイラー・ネビン(28)が、佐藤の死角を突く形でベースに入っていた。不意を突かれた佐藤のけん制アウトを告げる青木昴塁審(31)のコールを聞く前に、ネビンは大きなガッツポーズを作っていた。
 大山を遊ゴロに打ち取り、自ら招いた一死満塁の大ピンチを無失点で切り抜け、守護神の平良海馬(25)へつないだ山田が完璧なけん制の舞台裏を明かした。
「マウンドに集まったときに、古賀さんから『けん制もあるから、頭に入れておいて』と言われていました。ピンチになった割にはすごく落ち着いていたと思うし、地道に練習してきた形が実って本当によかったです」
 佐藤に四球を与えた直後に、内野陣がマウンドへ集まった。絶体絶命の山田を励ますと思われたが、実はキャンプから練習を重ねてきたトリックプレーのサインを出す可能性があると、捕手の古賀悠斗(25)が山田やネビンに告げていた。
 何よりも一死満塁を招いた山田自身が、まったく浮き足立っていなかった。
「森下選手への四球は粘り負けしてしまいましたけど、佐藤選手に対しては甘く入ってホームランを浴びるよりは、(四球で)出しても後続の打者には長打を浴びる確率が低いので、そこでしっかりと打ち取ることを考えていました」
 近江高時代にエース&4番として甲子園を沸かせた。センバツでは準V。山田は鳴り物入りで2022年のドラフト5位で入団したが、昨季までは一軍登板が「0」で、3年目の今季も一軍デビューを含めて負けている試合での登板が続いた。しかし、沈むボールを武器に凡打の山を築き、5試合無失点を継続していた4月27日のオリックス戦から、勝ちパターンの中継ぎ陣に組み入れられた。
 阪神戦を含めて19試合に登板。19イニングをわずか2失点(自責1)に封じ、注目され始めていた防御率は0.47とさらに上がった。

 

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