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阪神が日本シリーズの第7戦でオリックスを7-1で下して岡田監督が38年ぶりの日本一を達成(資料写真・黒田史夫)
阪神が日本シリーズの第7戦でオリックスを7-1で下して岡田監督が38年ぶりの日本一を達成(資料写真・黒田史夫)

なぜ38年ぶり日本一に輝いた阪神の岡田監督は「強かった」とオリックスに敬意を示したのか…11年前の紙切れ1枚の解任通告に「恨みなんかない」

 日本シリーズの第7戦が5日、京セラドーム大阪で行われ、阪神が7-1でオリックスを下して4勝3敗で38年ぶり2度目の日本一に輝いた。阪神は4回にシェルドン・ノイジー(28)の2試合連続となる3ランで先制し、5回にも5安打の集中打で追加点を奪い、守っては先発の青柳晃洋(29)が5回途中までを無失点に抑える力投を見せ、6回からは第3戦先発の伊藤将司(27)が3回を投げ切るスペシャル継投。オリックスの反撃を封じ、9回二死から登場した岩崎優(32)が胴上げ投手となった。投手力と打線のつなぎ。岡田彰布監督(65)がチームに浸透させたイズムが満載された野球で頂点に立った。なおMVPには、この日も4安打をマークしたシリーズ打率.483の近本光司(28)が選ばれた。

 「選手でも監督でも日本一。本当に幸せ」

 

 虎戦士たちが喜びを爆発させているマウンドへ岡田監督は静かに歩を進めた。
 胴上げは5回。
「慣れたのか。一回目よりだいぶ(高く)上がっていましたね」
 京セラドームの天井が近くに見えたのかもしれない。
 優勝インタビューで岡田監督はシリーズを通じて熱烈な声援を送ってくれたファンに感謝の意を伝え、「前回の日本一の時は、ちょうど27歳。長かったですね。僕は選手でも日本一を達成できて、また監督でも日本一を達成できて本当に幸せだと思います」と、38年ぶりの日本一の感激を噛みしめた。
 そしていつもの岡田節でファンの笑いを取ることも忘れていなかった。
「何とか達成できたんで。アレのアレを。本当に満足で」
 オリックス先発の宮城には第2戦で6回無失点に封じられていた。2点勝負だと考えていた岡田監督の予想を裏切ったのがノイジーだった。
「まさかホームランが出るとは思わんかった」
 4回一死から森下が7球粘ってレフト前ヒットで出塁すると、続く大山が死球でつないだ。ノイジーは内角を厳しく攻められて簡単に追い込まれたが、おそらく見送ればボールのインローのチェンジアップをすくいあげ、その打球はレフトスタンドの三階席まで飛んでいった。「千金」と岡田監督が称した先制の3ランとなった。
 実は8月の時点でノイジーとは今季限りで契約を解除する方針が固まっていた。守備は抜群だが、目に余る勝負弱さが理由だった。だが、9月に3本塁打、得点圏打率.300と盛り返し、日本シリーズでは、第5戦から5番に抜擢されて2試合連続の本塁打。残留の方向で、急きょ、見直されることになるのかもしれない。
 阪神は5回にも5本の集中打で3点を追加して宮城をKO、オリックスを突き放した。一死一、二塁から中野のショートゴロが併殺打と判定されたが、岡田監督がリクエスト。判定が覆り、チェンジが一転、二死一、三塁となったチャンスを生かした。
 第7戦の先発には青柳を選んだ。シーズンは最後まで安定せずに防御率は4.57。立ち上がりの制球が悪く、今季18試合に登板して1回の失点が17点もあった。不安視する声が多かったが、青柳にかけた岡田監督は、試合前に監督室に呼び、「思い切り楽しんで攻めろ」と激励した。ここ京セラドームでの3月31日の横浜DeNAとの開幕戦は青柳で勝った。シーズン最後の試合が同じ京セラドームならば、「青柳で始まって青柳で締める」。岡田監督らしい用兵だった。
 中嶋監督は青柳対策に8番野口、9番福田と左打者を2人並べたが、7番までの打順は第6戦と同じだった。青柳は、中川、紅林、森、頓宮、ゴンザレス、杉本の6人に1本のヒットも許さず5回二死まで無失点に抑えた。
 6回からは、第3戦で先発した伊藤将に3イニングを任せるというスペシャル継投。そして9回には、なんと桐敷を最初に使い、二死となってから守護神の岩崎を投入するという念の入れようだった。岩崎は、頓宮に一発を浴びたが、岡田采配は、最後まで虎党にサプライズを与え、そして、その用意された舞台で選手が輝いた。

 

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