
「本当に勝てると思っていた。敗因は技術の差」5回失神KOの佐々木尽は“オオカミ少年”だったのか…再起会見で明かしたノーマン戦の3つの誤算と世界に「追いつける」とした根拠
「細かいディフェンスを一番学んだ。これができないと同じことを繰り返す」と、本人も口にしたが、ここが改善されない限り「攻撃が最大の防御」のボクシングでウエルター級のトップに立つなどおこがましい。
また100ラウンドのスパーリングよりも公式戦の1試合である。再起戦は格上とやる必要はないだろうが、再び世界を目指すのであればランカーを撃破しながら、世界ランキングを取り戻していかねばならない。「すぐにではないが海外という選択肢もある」と中屋会長も海外進出プランを抱く。ウエルター級の本場である米国のリングで世界ランカーをなぎ倒して評価と技術をアップする必要もあるのかもしれない。
ただ佐々木の世界再挑戦への道は厳しい。
米専門サイト「ボクシングシーン」は、ノーマンが今年後半に、元ライト級の4団体統一王者で、現WBC世界スーパーライト級王者のデビン・ヘイニー(米国)との対戦に「口頭で合意した」と報じた。ヘイニーは、当初、遺恨のあるライアン・ガルシア(米国)との再戦をターゲットにしていたが、ガルシアが1年ぶりの復帰戦に敗れたため気運が薄れてしまっていた。ノーマンとヘイニーのビッグファイトが実現すれば、もうこの勝者にはとても手が出せない。
一方で、7月19日には元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)がWBC世界同級王者のマリオ・バリオス(米国)に挑み、WBA&IBF世界同級王者のジェロン・エニス(米国)がスーパーウエルター級への転級を宣言するなど、ウエルター級の世界戦線は激動している。WBO世界スーパーライト級王者のティフィモ・ロペス(米国)もウエルター級に転級してくる方向。そこに佐々木の名前が加わってくるためには、かなりの時間と結果の積み重ねを要する。しかし佐々木は希望を失ってはいない。
「絶望はまったくしていない。もし無理だと思ったら辞めています。いけると思ったのでやる。希望が見えているからやる。ベルトを持っている姿を本気で見せたい」
そして、今回の世界戦を実現させた大恩人のプロモーター、大橋ジムの大橋秀行会長の金言を例に出した。
「勝つか負けるか」ではなく「勝つか学ぶか」
佐々木がどこまで現状を把握しているかわからない。
「この大法螺吹きが!」の文句のひとつでも、言ってやろうと思ったが、本当に誠実な“超ポジティブ思考”を直球でぶつけられると応援したくなる。それが「日本人初のウエルター級世界王者になる男」佐々木尽の魅力なのだろう。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)