
国内で36年ぶりウエルター級世界戦…井上尚弥がエールの佐々木尽は“三日月フック”で“世紀の番狂わせ”を起こせるのか…パッキャオと対戦した元王者は「ノーマンに危険も」可能性を示唆
プロボクシングのWBO世界ウエルター級タイトルマッチ(19日・大田区総合体育館)の前日計量が18日、横浜市内のホテルで行われ、王者のブライアン・ノーマン・ジュニア(24、米国)、挑戦者の同級2位の佐々木尽(23、八王子中屋)が揃ってリミットの66.6キロジャストでクリアした。フェイスオフで31秒も睨みあった佐々木は「動物としてオレが強い。100(%)勝つ」と豪語した。日本では認められていない8オンスのグローブが使用されることになり、それを生かす武器が、陣営が独自開発した“三日月フック”。またお手本としているスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)からの応援メッセージが支えになったという。佐々木は“世紀の番狂わせ”を起こし日本人初のウエルター級王者になることができるのだろうか?
「ノーマンはびびっていた」
計量をパスした直後の恒例のフェイスオフ。18秒を過ぎてJBCの関係者が止めに入ったが、2人は互いに目を離さない。
「このまま1日でもやってやるっていう気持ちでした」
中屋廣隆トレーナーが体をつかんで離そうとしたが佐々木はさらに顔を近く寄せる。最後は、ノーマンがニヤと笑い、佐々木尽も同じく笑顔で応じて2人は離れたが、握手はしなかった。
「かわいそうに。明日倒してやるのに」
佐々木はそのフェイスオフでノーマンの目を見て「オレの方が強い。いけると思った」という。
「目って人の脳が出てくる場所。考えていることがわかる。生物的なレベルがわかるんです。オレの方が強いな、と動物として思いましたね。技術うんぬんより、生物的強さで明日は勝敗がつくんじゃにあかと感じています」
ノーマンの目から「ちょっと不安がある。びびってんのかなと、恐怖を感じているんじゃないかな」というものを読み取った。
12日の公開練習では「最後の最後まで不安が残る。怖さもある」という話をしていた。だが、すべての練習を無事に終えて「いきなり怖さが楽しさになって自信がぱっと広がった。ワクワクと楽しみしかない。こんな感情は初めて」という。その理由を前日の公式会見でノーマンと対面して「勝てると思ったからじゃないですか」と説明した。
力強い応援メッセージもあった。あのモンスターが、前日の公式会見での佐々木の発言を受けて、自身のSNSに「佐々木尽の楽しみが溢れちゃって伝えたいことが上手く伝えられないところもまた魅力。歴史を変えてくれ!!ノーマン選手が欲しくてたまりませんは反則です」に投稿したのだ。所属する大橋ジムの大橋秀行会長が、佐々木に惚れ込み、日本のボクシング界を盛り上げるため、国内では、実に36年ぶり、史上5人目となるウエルター級の世界戦を日本で実現させた。その背景もあって、この世界戦を盛り上げるための“仕込み”かと疑ったが、実は、まったく違っていてモンスターが、心から「歴史を変えてくれ」の思いを込めて伝えたエールだった。
佐々木は感動を隠さなかった。
「めっちゃ嬉しかった。尚弥選手をお手本として動画を見ているんです。実際にそう言ってもらえるのは一番嬉しい」
階級もスタイルも違うが、モンスターのボクシングは、佐々木にとって最高の教材。親交はないが、4年前に開催されたプロアマ合同のチャリティーイベント「レジェンド」に佐々木が参加し、トップアマの岡澤セオン(大橋)と対戦した後に大橋ジムを訪れた際にロッカー内で、そのイベントで比嘉大吾(志成)と対戦していた井上と会い、「見てたよ。面白かったよ」と言葉をかけてもらったことが今でも心に残っているという。