
劇的幕切れを演出した阪神の森下翔太スーパービームの裏に虎“最強スカウト”の眼力
ドラフトで1位に入札したのは浅野で巨人との競合でクジで敗れたが、外れ1位で森下を単独指名できた。岡田顧問は「外れた方が良かったんや」という後日談を口にしていた。近本、森下、佐藤、大山とドラフト1位の野手がすべて主軸になっている12球団で“最強”と評される虎のスカウト陣の眼力、調査能力には素晴らしいものがあるが、担当の吉野誠スカウトらがマークして森下を1位指名した裏にも確固たる裏付けがあったわけである。それが入団3年目のこの日、スーパープレーとなって日の目を見た。
拙攻が目立ち、決して流れが良かったわけではなかった。3回には先頭の坂本がレフト前ヒットで出塁するも、スタメン抜擢を受けた島田は、三球三振。初球のバントの構えをしてストライクを見逃し、2球目、3球目と強攻してバットに当たらず走者を送ることもできなかった。4回一死満塁のチャンスに大山が併殺打、5回には一死一、三塁で伊藤将の初球にセーフティスクイズを敢行したが、アビラのバックトスの美技で、三塁走者の小幡が本塁タッチアウト。さらに二死満塁とチャンスをつなげるも中野はボール球に手を出してセカンドゴロに倒れた。
その嫌な流れを断ち切ったのが佐藤だった。
6回無死一塁。試合後に高津監督から物言いをつけられたカウント1-2の4球目はハーフスイング気味だったが、ボールの判定。アビラの5球目が暴投となり無死二塁となると続く6球目。藤川監督が「浮いたチェンジアップ」と表したアビラの失投を見逃さなかった。浜風を切り裂き、均衡を破る24号2ランをライトスタンドに運んだ。
「やったったなっていう感じですね」
交流戦での日ハム戦での“勘違い確信歩き”を批判された佐藤が、確信のバットフリップ。「今日は確信でした」と振り返るほどの凄まじい打球だった。85試合目にして2021年、2023年と2度マークしたシーズン自己最多の24号に並んだ。シーズン40発ペースである。
「まだまだ打っていきたい」
歴代の阪神で40本超えは、2010年の47本のブラゼル、2005年の40本の金本以来出ていない。本塁打王争いで2位の横浜DeNAの牧に9本差、打点王争いでは森下に3点差の62でトップだが、打率も.288でランキング6位に急上昇してきた。頼もしい4番だ。
11連勝の反動が懸念されたが、ストップした後に連勝。チームのミスが結果で帳消しにされるのがチームの勢いである。
藤川監督が言う。
「自分達のタイガースのゲームプラン、ゲーム運びはまったく変えていない。その中で先発投手がしっかりゲームを作って攻撃を待つ形ができているから今日までは確率としてこちらに分があるゲームになっている」
そしてこう続けた。
「選手達の疲弊がここから先さらにハードになってくる。(疲れがたまらないように起用を)分散しながら、岩崎や石井は、なかなか勝負から逃げられないところもあるが、野手の主力メンバーが立ち向かってくれているから、ファンの方にねぎらってもらって、明後日からオールスターまでみんなで頑張っていきたい」
藤川監督はファンへ心から感謝の思いを熱くつけ加えた。
明日15日から甲子園で中日と3連戦。そして19日から東京ドームでの巨人3連戦でペナントレースの折り返しとなる。チーム状況に不安はない。首位固めの夏になりそうだ。