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比嘉大吾が公開練習で強烈なパンチを披露(写真・山口裕朗)
比嘉大吾が公開練習で強烈なパンチを披露(写真・山口裕朗)

「なぜか外傷を負う不思議なパンチ」超異例の3戦連続で世界戦に挑む比嘉大吾が大記録を達成する可能性のこれだけの理由

 バルガスは天心が昨年7月に3回TKOで倒したジョナサン・ロドリゲス(米国)をWBAの挑戦者決定戦で2度ダウンを奪い7回TKOで下しているが、この試合では右のオーバーフックをもらいダウンを喫している。凄みの増した比嘉のパンチが炸裂すれば、おのずと結果は見えてくる。
 しかも、武居は野木トレの仲間、堤はプライベートの親友という微妙な関係にあったが、バルガスは見ず知らずの米国人。なんら遠慮することなく殴れる。
「友達でも思い切り殴れましたが、言葉が通じない怖さはない。(バルガスは)何を考えているかわからない。でもそれが世界戦ですよね。違います?」
 野木トレーナーは早いラウンドでのKO決着も視野に入れている。
「序盤のKO決着もある。ただ判定勝ちでも問題ない。フルを想定してやります。倒さなくて勝てる計算のできるボクサーになってきた」
 カギになるのはジャブの攻防だ。バルガスが、強いパンチを当てることのできる左右のフックの射程距離は近い。
「ジャブが機能すれば向こうのフックが当たりづらくなる。ストレートだけに注意を払えばよくなる」
 ジャブが当たれば、比嘉はバルガスの得意とする距離の半歩外でボクシングができる。この日の公開練習でも、左のジャブ、ボデイジャブと、左の器用な使い方が目についた。
「当てさせてくれないなら距離をつめて打ち合いに誘う展開も考えている」とも野木トレーナーは言う。
 その戦略を実行できる根拠もある。
 比嘉―野木トレーナーコンビの凄まじい練習量には日本屈指の評判があるが、今回はさらにパワーアップした。2週間前に18ラウンドの過去最長のスパー、そして週に1度の60分~75分間のマラソンマススパーを消化してきたというのだ。「陸上のインターバルトレーニングのような効果がある」と野木トレーナが狙いを説明する18ラウンドスパーは、6ラウンドごとに10分のインターバルでの3セット。同じ沖縄出身で同門のWBO世界フェザー級5位の大湾硫斗、吉良、トップアマの平拳成(駒沢大)の3人と拳を交えた。比嘉は最初「ウソかな?」と思ったそうだ。
 さらに「筋持久力と集中力を高めること」を目的に週に一度、マラソンマススパーも消化していた。今回のスパーの総ラウンド数は120から130ラウンドだが、マススパーを入れると300ラウンドを超えるという。だが、比嘉も29歳。オーバーワークや疲労の蓄積を避けるため、週に木曜と日曜と2日休みを入れメニュー間のインターバルも長めに取り、今回は2度ほど練習を途中で切り上げたり、スパーを中止にしたこともあるという。それでもこの日は午前中に階段上りをやってから、公開練習に臨んだ。体重も練習終わりで、残り4キロちょっと。ここまですべてが「いい感じ」と比嘉は笑みを浮かべた。

 

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