「この判定おかしくない?」「総合格闘家が勝っていた!」異色マッチでWBC世界王者フューリーが元UFC王者ガヌーにまさかのダウンを奪われるも僅差判定勝利に識者の間から異論噴出!
プロボクシングのWBC世界ヘビー級王者のタイソン・フューリー(35、英国)と、総合格闘技UFCの元ヘビー級王者、フランシスコ・ガヌー(37、カメルーン)の異種格闘技対決が28日(日本時間26日)、サウジアラビアのリヤドで実現した。3分×10ラウンドのボクシングルールで行われ、フューリーが絶対有利といわれたが、ガヌーが3ラウンドに左フックでダウンを奪う、まさかの展開となり、フューリーがクリンチなどを駆使して2-1の判定でなんとか逃げ切った。だが識者の間からは判定への異論が噴出した。フューリーは、12月23日に同じくサウジアラビアでWBAスーパー、IBF、WBO世界同級王者のオレクサンドル・ウシク(36、ウクライナ)と4団体統一戦を行う予定となっていて、試合後にリングに上がったウシクに「さあやろう!」と呼びかけたが、ボクシングデビュー戦の総合格闘家への苦戦で、盛り上がりに欠ける演出となった。
3回にガヌーが左フックでダウンを奪うもフューリーは反則パンチをアピール
まさかの出来事にサウジのキングダムアリーナに詰めかけたファンが騒然となった。あの現役WBC世界ヘビー級王者が、ボクシングデビュー戦となる元UFC王者にダウンを奪われたのだ。第3ラウンド。フューリーが仕掛けたワンツーの打ち終わりにガヌーの放ったカウンターの左フックがヒット。よろけるようにして腰からダウンした。両手を着いたフューリーは、目をひんむいて呆然。ガヌーは、あざ笑うかのように、ボクシングの世界王者を見下ろしながらダンスした。
「何でもないことだ。ダウンはボクシングにはつきもの。後頭部を打たれた。あれでボクシングに引き戻された」
試合後、フューリーは後頭部への反則打撃であることを強調したが、まったく問題のない許容範囲のパンチ。フューリーは、すぐさま立ち上がったが、明らかに動揺をしていた。
第4ラウンドからは、右のガードを意識的に上げて、ガヌーの左フックに備え、左肩のショルダーブロックを固め、苦し紛れのクリンチを多用した。サウスポースタイルにチェンジしてみたり、ガヌーに対して見せていた余裕はすっかりなくなっていた。
総合格闘家のガヌーは不慣れなボクシングファイトでラウンドを重ねるごとにスタミナが切れてきたが、フューリーも練習不足が明らかで、同じようにペースダウン。8ラウンドには、再び左ストレートから、至近距離の左右フック、アッパーとガヌーに攻め立てられて、防戦一方になるシーンも。9ラウンド、10ラウンドも、フューリーは、フェイントを使って、ジャブ、ワンツーで距離を取って慎重に戦うが、ダウンで奪われたポイントを取り返して、KOを狙うような素振りはなかった。ポイントアウトできている自信でもあったのだろうか。逆にフライングパンチを繰り出したガヌーに観客からの声援コールが起きたほど。
最終ラウンドのゴングが鳴ると、フューリーは右手でガヌーの頭をなでて、そこにキスをしたが、派手に喜びを表現することはなかった。逆にガヌーは、満足そうな笑顔で両手を上げて観客に勝利をアピールしていた。
採点の結果は95-94で一人がガヌー。96-93、95-94で2人がフューリー。採点をマイケル・バッファーが読み上げた瞬間、フューリーは右手を上げてぴょんぴょんと飛びはねて、ガヌーは悔しそうに苦笑いを浮かべた。
「どれだけ僅差だったは知らないがオレが勝った」
それでも絶対有利の戦前予想がされていた試合で、プロボクシング世界王者としてのインパクトを残すことができず、フューリーは、「台本通りにはいかなかった。彼は凄いファイターだ。強いし考えていたよりずっといいボクサーだった」とガヌーを称えた。
「彼は器用じゃない。前には出てこなかった。下がって、こちらの出方を待ってパンチを探っているようだった。彼はここ10年で最もタフなファイトのひとつを僕に与えてくれた」
フューリーは昨年12月にデレック・チゾラ(英国)をTKOで退けて以来のファイトで、そのブランクの影響が出たという。強打者のデオンテイ・ワイルダー(米国)を2度、倒した頃の出来とは程遠かった。ガヌーのボクシング技術を舐めきってトレーニングをさぼっていたのかもしれない。