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僅差判定負けの拳四朗は悔し泣き(写真・山口裕朗)
僅差判定負けの拳四朗は悔し泣き(写真・山口裕朗)

なぜWBC&WBA王者の拳四朗はダウンを奪うも1-2判定で王座転落したのか…12月サウジでIBF世界Sフライ級王座への3階級挑戦計画が白紙…父の寺地会長は「リベンジが一番だがまずは休養」

 ベルトを統一した前戦では、WBA王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)を最終ラウンドで仕留めたが、今回は、ただリスクを負っただけで逆転KOのドラマは作れなかった。
「思ったよりも、もらっちゃったというのがあった、ディフェンスができていなかった。(ロス合宿の成果が)染みついていなかった、いくか、足を使うか。どっちでいくかをずっと迷っていた」
 拳四朗はそう苦闘の12ラウンドを振り返った。
 一方のサンドバルは、「コーチが過去の試合映像を見直して研究していた。その戦略が指示され、僕は聞いただけ。ポイントはジャブとフェイント。『止めるな、戦い続けろ』と指示された。勝敗を分けた」と自慢気に明かした。
 実は、12月27日にサウジアラビアで計画されている井上が参戦する「リヤドシーズン」のメガイベントへの正式オファーが届いていて、1階級上げて、3階級制覇となるIBF世界ス―パフライ級王者ガルシアへの挑戦が内定していた。
「負けたんですから。それも白紙ですね」
 寺地会長が悔しそうに語る。
 その先には、拳四朗待望のWBC&WBO世界同級王者、ジェシー“バム”ロドリゲス(米国)への挑戦も見えていたが、すべてがオジャンになった。
 決して油断があったわけはない。指名挑戦者を除くと、これが世界初挑戦とはいえサンドバルが、最強挑戦者であることは理解していた。だが、どこかで先を見て危機感に欠けていたのかもしれない。
 ベルトを失うのは4年ぶり。フライ級王者となり3戦目ですべてを失った。
 新王者のサンドバルは、「もちろん彼が望めば再戦したい」と拳四朗との再戦を受けて立つ考えを明かした。だが、拳四朗は「悔しい気持ちはそれはある」としたものの、リベンジについては「今はなんともいえない」と言葉を濁した。
 再起するかどうかについてさえ「何も考えられない」と言った。それはそうだろう。負けることなど、微塵も想定していなかったのだ。
 寺地会長も「次のステップのことだけを考えていた。負けは想定していなかった。もしかしたら階級を上げた方がパフォーマンスが上がるかもしれないが、リベンジできるのが一番いい。ただこの試合も含めて、この1、2年、ダメージの残る試合をしてきているので、まずは休むことが最重要。最低半年?そうですね」と、再起への可能性を示唆しながらも、まずは休養させることを明言した。
 2021年9月に矢吹正道(緑)に10ラウンドTKO負けして以来のキャリア2度目の黒星。前回は、矢吹をダイレクトリマッチで3ラウンドに沈めてリベンジを果たした。だが、その試合から拳四朗は、好戦的スタイルへ変貌。以降、6連勝(5KO)で米リング誌のパウンド・フォー・パウンドランキングで9位になるほどの世界的な評価を得たが、一方でパンチを被弾するというリスクも負ってきた。
 これが18度目の世界戦。寺地会長は「ダメージが蓄積しているなという傾向は練習でも、今日の真剣勝負でも見えなかった」と言うが、どこかで目に見えない“勤続慰労”が蓄積しているのかもしれない。
 まずは休養。そこで闘争心の回復を待てばいい。ジャッジの一人は拳四朗を勝ちにしたのだ。決して限界を感じさせるような敗戦ではない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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