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  • 「原因を究明して打てる手はすべて打ちたい」ボクシング界は相次ぐ“リング事故”にどう向き合うべきか…2人が救急搬送されて開頭手術…EXILEのATSUSHIから激励メッセージ届く
ドロー判定を聞いた瞬間に挑戦者の神足茂利(左)はひざまずいた。この段階ではまだ意識はハッキリしていたのだが…(写真・山口裕朗)
ドロー判定を聞いた瞬間に挑戦者の神足茂利(左)はひざまずいた。この段階ではまだ意識はハッキリしていたのだが…(写真・山口裕朗)

「原因を究明して打てる手はすべて打ちたい」ボクシング界は相次ぐ“リング事故”にどう向き合うべきか…2人が救急搬送されて開頭手術…EXILEのATSUSHIから激励メッセージ届く

 日本ボクシングコミッション(JBC)は2日に後楽園ホールで行われたOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチで引き分けた挑戦者の神足茂利(28、M.T)と日本ライト級挑戦者決定戦で8回TKO負けした浦川大将(28、帝拳)の2選手が、試合後に都内の病院に救急搬送され、いずれも「急性硬膜下血腫」で緊急開頭手術を受けたと発表した。5月にはIBF世界ミニマム級タイトルマッチで、重岡銀次郎(25、ワタナベ)が救急搬送され、開頭手術を受け、未だに意識が戻らない状況。JBCは、相次ぐリング上の事故を問題視し、地域タイトルのラウンド数を12回から10回に短縮することや、極度の水抜きによる減量を防ぐため体調管理アプリの導入などの緊急対策を施すことを検討し始めた。

 地域タイトル戦のラウンド数を12回から10回に短縮へ

「今は回復を願うだけです。ただ偶然が重なったと思ってはいけない。因果関係を突き止めることは難しいのですが、しっかりと原因を究明、検証して再発防止に向けて、早急に打てる手はすべて打ちたい」
 JBCの安河内剛本部事務局長は沈痛な表情で伝えた。
 2日の後楽園ホールでの「DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.35」で、試合後に意識を失い、救急搬送され緊急開頭手術を受けるボクサーが2人も出る非常事態が起きた。日本のボクシング史上初の出来事だった。
 2人共に再起戦だった第4試合の日本ライト級挑戦者決定戦は、1ラウンドから互いに足を止めて至近距離で殴り合う激しい打撃戦となった。6、7ラウンドと浦川が突き放すような左ジャブとワンツーで距離を取ってコントロール。ポイントをリードし始めたかに見えた。だが、逆転を狙う斎藤陽二(角海老宝石)が最終の8ラウンドで前に出て勝負にきた。残り1分で猛ラッシュ。ロープを背に右を2発もらった浦川は棒立ちとなり、留めの右ストレートがヒットして崩れるようにしてダウンしたところでレフェリーはTKOを宣言した。リング上で浦川は意識を失っていた。すぐに担架で医務室へ運びこまれ、救急車で救急搬送され、開頭手術が行われた。
 メインのOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチは、ダウンシーンや相手をぐらつかせるような強烈なダメージブローもないまま判定にもつれこんだ。タイトル初挑戦の神足は、巧みなステップワークとジャブを軸に距離を取るボクシングでサウスポーの王者、波田大和(帝拳)を空回りさせてポイントアウト。4回、8回に公開された途中採点ではリードしていた。
 一方の元大相撲の旭道山の甥である波田は9回から逆転を狙って前へ出た。
 10回にはバッティングで神足が眉間をカット。2度、ドクターチェックが入ったが続行となり、神足は「来い!」とジェスチャーして打ち合いに応じた。11回に被弾はあったがリードジャブでさばきコーナに戻る時は応援席に向かって胸を叩いた。最終ラウンドもステップバックとクリンチを駆使して必死に反撃を食い止めたが、攻勢は波田。波田は一発で勝負を決めるパンチ力を秘めるが、決定的なシーンはないまま判定にもつれこんだ。採点は三者三様のドロー。
 判定を聞くと神足は両膝から崩れ落ちた。だが、すぐに立ち上がって健闘を称えあい、四方のファンに順番に頭を下げてからリングを降り、しっかりとした足取りでファンの声援に応えながら控室に戻った。異変が起きたのはそこからで、頭痛などを訴えて医務室へ運ばれた。
 松田ジムでトレーナーを務めている神足の実兄が、経過報告をするために立ち上げた応援Xによると、医務室で、次第に目を閉じてきたので怖くなり、「シゲ。意識はハッキリ保つんだぞ。頑張れ」と声かけると「よっしゃ!」と返事したが、そのままイビキをかいて眠りにつき、その後、意識を完全に失ったという。
 兄は救急車を要請したが、救急車両がホールに到着したのは約40分後。
「JBCのドクターの対応は必至に救命しようとしている人の対応ではなかったように思えます。もう少し早く病院へいけたらもっと何かが変わったかもしれないと思うと、悔しさと怒りがこみあげてきます」と問題提起した。

 

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