
28歳で初先発初勝利の巨人“遅咲き左腕”森田駿哉は11年前の夏の甲子園で亡くなった名スカウトが「ナンバーワンのドラフト候補」と見初めた逸材だった
巨人の2年目左腕の森田駿哉(28)が6日、東京ドームでのヤクルト戦で6回92球被安打2無失点の好投でプロ初先発初勝利をつかんだ。阿部慎之助監督(46)は次戦の先発起用を明言した。森田は富山商―法大―Honda鈴鹿を経て2023年のドラフト2位で指名された遅咲き左腕だが、ヤクルトの名スカウトとして知られた故・片岡宏雄さんが夏の甲子園で「プロで通用するナンバーワン左腕」と目を付けていた知られざる逸材だった。
ヤクルト打線を6回わずか2安打無失点の快投
プロ2年目の28歳の遅咲きのサウスポーが今宵のヒーローだった。
初先発初勝利。バットを折りながら執念の先制タイムリーをマークしたリチャードに続いてお立ち台に呼ばれたのが森田だ。
「昨年は何もできなかったので今年はと思っていた。シーズン序盤は2軍だったんですけど、ここでしっかりと1つ結果を出せて良かった。(2度の中継ぎ登板後に)まさかこんな早く(先発の)チャンスをもらえると思ってなかったので、ちょっと不安もあったんですけど(先発に)指名していただいたんで、しっかりと結果を出したいなと思って準備することができた」
緊張した表情の森田は、ウイニングボールを後ろのポケットから初々しく取り出した。
「むちゃくちゃ緊張した」という1回の立ち上がりでいきなり先頭の赤羽の一塁ゴロを大城が後逸、バントで送られ、一死二塁のピンチを迎えるも内山をフォークで三振。続く村上には、「しっかりとインコース使っていかないと抑えれない」と、3球連続で武器であるツーシームをインコースへ投じた。すべてボールとなり3-0となったものの、そこから粘り強く、フルカウントまで持ち直して、最後はアウトローへのスライダーで泳いだ村上のバットに空を切らせた。
4回に一死から内山に初ヒットとなる二塁打を許し、村上は三塁フライに打ち取るも、オスナに四球を与えて、二死一、二塁の2度目のピンチを背負う。だが、山田の観客席ギリギリのファウルフライを丸が滑り込んでキャッチするファインプレーで森田を援護した。
5回終了後に高校時代の同級生や後輩がビジョンに映し出された。ドームでは恒例の応援企画。偶然か仕込みかは不明だが、なぜか本物の友人が登場することになり、森田は「情けないピッチングはしたくないと思っていた。5回にビジョンで友人が映ってくれたのですごい力になった」という。
その激励が、阿部監督が「球威が落ちてきた」と見ていた最後の1イニングを後押ししてくれた。一死から岩田にリクエストを求めても不思議ではなかった微妙なタイミングでの一塁への内野安打を許したが、ツーシームで、内山を三塁併殺打に打ち取り、7回から田中瑛にバトンタッチした。結局、森田は、92球を投げてわずか2安打の4奪三振で、三塁も踏ませぬ快投だった。
グリフィン、西舘、井上らが抹消となり、先発ローテーが苦しい中で出てきた救世主を阿部監督は「素晴らしいピッチングでした。要所でいいところに決めていました」と絶賛した。