
「医務室で一度は意識が戻ったのに…」2日の日本ライト級挑戦者決定戦TKO負け後に開頭手術の浦川大将さんが死去…同じ日に試合をした神足茂利さんに続く訃報
プロボクシングの日本ライト級4位の浦川大将さん(帝拳)が9日に死去した。浦川さんは、2日に後楽園ホールで行われた日本ライト級挑戦者決定戦で同級5位の斎藤陽二(29、角海老宝石)と対戦し8回TKO負け。リング上で意識を失い、担架で運ばれ、都内の病院に救急搬送され「急性硬膜下血腫」の診断で緊急開頭手術を受けていた。経過観察中だったが意識が戻らず帰らぬ人となった。28歳だった。同日の興行では、メインのOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチで神足重利さん(M.T)も、試合後に意識を失い、救急搬送された都内の病院で緊急開頭手術を受けて前日の8日に死去した。享年は同じく28歳だった。
逆転TKO負けを喫して担架で運ばれる
2日続けての悲しいニュースに言葉が出ない。
神足さんが天国に旅立った翌日に同じ興行で倒れた浦川さんが亡くなった。
浦川さんは、2日の日本ライト級挑戦者決定戦が昨年10月に村上雄大(角海老宝石)に僅差判定負けして以来の2度目のチャレンジだった。それだけに空位のタイトルへの挑戦権を得るチャンスに気合が充満していた。一方の斎藤もここが再起戦で1ラウンドから互いに足を止めて殴り合う激しい打撃戦となった。
6、7ラウンドと浦川さんが突き放すような左ジャブとワンツーで距離を取ってコントロール。7ラウンドまでのジャッジ三者のポイントでは浦川さんがリードしていた。
だが、逆転を狙う斎藤が最終の8ラウンドに勝負にきた。果敢に前に出て残り1分で猛ラッシュ。ロープを背に右を2発もらった浦川さんは棒立ちとなり、とどめの右ストレートがヒットしてコーナーに崩れるようにしてダウンしたところでレフェリーは、TKOを宣言した。リング上で浦川は意識を失っていた。すぐに担架で医務室へ運びこまれたが、ここで一度、浦川さんは意識を取り戻して関係者に「勝てなくてすみません」と言葉まで発している。
周囲は「無事で良かった」とひと安心した。念のため救急車で都内の病院へ搬送された。しかし、その車内で再び意識を失い「急性硬膜下血腫」の診断で緊急開頭手術を受けた。脳の腫れが引く1週間が“ヤマ”とされていたが、意識が戻らず手術から7日目に帰らぬ人となった。
2018年にプロデビューした浦川さんは、2020年のライト級の全日本新人王。ここまでの戦績は10勝(7KO)4敗で、昨年4月には、前日に死去した神足さんと対戦して6回TKO勝ちしていた。
名門の帝拳では2009年の日本ミニマム級王座決定戦で、辻昌建さんが10回にKO負けを喫して意識不明となり、開頭手術を経て死去する事故があり、ボクサーの体調管理やセコンドワークには万全の注意を払ってきた。
この試合をきっかけにインスペクターによる、コーナーでのボクサーの健康状態をチェックするなどの新たな安全管理のシステムがJBCで取り入れられるようになっていた。7月30日に高見享介がWBA世界ライトフライ級王座を奪取、9月14日には名古屋で松本流星がWBA世界ミニマム級王座決定戦を控え、11月には那須川天心が、中谷潤人(M.T)が返上を公言したWBC世界バンタム級王座決定戦に挑む予定。勢いに乗っている名門ジムを大きなショックを包み込むことになった。