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アマ13冠の堤駿斗がデビュー戦で東洋太平洋ランカーのフィリピン人に“準完全”の判定勝利(写真・山口裕朗)
アマ13冠の堤駿斗がデビュー戦で東洋太平洋ランカーのフィリピン人に“準完全”の判定勝利(写真・山口裕朗)

判定勝利デビューした“アマ最高傑作“堤駿斗は本当に“ネクスト・モンスター”級の逸材なのか?

 

WBO世界スーパーフライ級王座を守った井岡一翔(33、志成)の指名試合(13日・大田区総合体育館)のアンダーカードは豪華だった。元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(26)がダウンを食らう劣勢からの逆転勝利。移籍した元WBOアジアパシフィックフェザー級王者の森武蔵(22)は再起戦をクセモノのプレスコ・カルコシア(フィリピン)からダウンを奪い圧勝した。なかでも注目はアマ13冠で“アマ最高傑作”と言われた堤駿斗(23)のフェザー級8回戦でのデビュー戦だった。対戦相手のジョン・ジェミノ(30、フィリピン)のタフさと両拳を痛めるアクシデントが重なりKO決着とはならなかったが、文句のつけようのない3-0判定勝利。バンタム級の世界3団体統一王者、井上尚弥(29、大橋)のアマ戦績に重なることから”ネクスト・モンスター”と称される堤の素質とは?

「インパクトのある勝ち方ができず悔しい」

 初めての勝利者インタビューに笑顔はない。

「ダウンもなく不甲斐ない試合になってしまった。自分の色を出してインパクトのある勝ち方をしたかったが、そのような試合ができず悔しいです」  堤は、素直な気持ちをリング上から伝えた。

 注目のデビュー戦だった。

 プロテストはB級だったが、世界ユースの金メダル、習志野高時代の全日本制覇など、「アマ最高傑作」と呼ばれた輝かしいアマ13冠の実績を認められ、井上尚弥と同じく特例でのA級(8回戦)デビューとなり、しかも、相手は37戦23勝(13KO)13敗1分の東洋太平洋5位のランカーである。

2018年には、中沢奨を倒し、5年前には、TKO負けしたものの、現WBO世界フェザー級王者の“ビッグネーム”エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)と対戦したキャリアもある。

 その難敵を2人がフルマークをつけた“準完全”の3-0判定で下したのだから文句のつけようがない。しかし、堤はKOでのセンセーショナルなデビューを飾れなかったことを悔やむ。

「(パンチが相手に)効いているなと思った場面もあったが、たたみかけることを許されず、冷静に起死回生を狙ったような目をしていた。殺気を感じて攻め込めなかった。プロ経験のなさが出てしまった」

 備わっている危機察知能力がリスクを負って倒しにいくことへブレーキをかけたようだが、実は、判定決着も無理もないアクシデントがあった。

 インタビュースペースに現れた堤は、氷嚢で左拳、右拳を代わる代わる冷やしていた。試合中に両拳を痛めてしまっていたのだ。

 左拳が壊れたのは2ラウンド。カウンターの左フックをお見舞いした際に「直後はちょっと痛いくらいだったが、コーナーに戻って痛さが出た」。次に右拳を痛めたのが5ラウンド。絶妙の右のクロスカウンターを叩きこんだが「頭部に当たってしまった」という。

「グローブが思った以上に薄かった。アマで経験したことのない今までにないような痛み。プロの厳しさを教えられた」

 アマでは、10オンスのグローブを使うが、プロ用のそれより拳部分が分厚く作られている。プロの8オンスは、殺傷能力が増すが、自らの拳を痛めるリスクもある。しかも堤は日本製よりも拳部分が薄いとされるメキシコ製「レイジェス」のグローブを使用していた。拳の負傷は、ハードパンチャーの宿命で、井上尚弥も、デビューから数年は、拳の怪我に苦しんでいた。手術とバンテージの巻き方で克服したが、堤も、今後はバンテージについての研究は必要なのかもしれない。

 

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