
「プロレスラーもできない170Kgフルスクワット」阪神の石井大智が40試合連続無失点の日本新記録…1m75“小さな雑草155㎞右腕”の源流…「明日も使ってもらえるかの不安をバネにした向上心」
今や桑原氏の説明がいらないほどサプリに関する知識が豊富で、最近は、あの陸上の100mの世界記録保持者であるウサイン・ボルト(ジャマイカ)が、主食としていたスーパーフードとして知られる「ヤム芋」に似た「琉球ヤム芋」から抽出される成分で作られたサプリも試しているという。石井の奥さんは、アスリートフードマイスターの資格を持ち、シーズン中に疲労を回復させ、筋量などを維持させるための食事を用意してくれている。
石井は、初の国立高専高校(秋田工高専)出身のプロ野球選手で藤川監督がかつて所属した四国アイランドリーグプラス、高知ファイティングドッグスを経て阪神に入団した。中、高時代にプロ野球選手など夢にも思っていなかったそうだが、中学の軟式野球部のチームメイトだった成田翔が2015年のドラフトでロッテに指名されたことで、「もしかしたら」とプロが頭をかすめトライアウトを受けて独立リーグへ進んだ。ただ当時のストレートの球速は136、137キロ程度。1m75の小さな体で、150キロを超えるストレートを投げることができるようになったのはウエートトレーニングによる肉体強化だ。
桑原氏によると、石井は、ヘビーウエート、初動負荷、トップの陸上選手クラスのパワー系まで、ありとあらゆるウエートトレーニングを自分で考えながら試してきているという。
「背中、下半身、コアと、投手に必要な筋力をすべて高いレベルで備えています。偏っていないから、あれだけの出力につながるのかもしれませんね」
フルスクワットと呼ばれるお尻を床に着くくらい沈める下半身のトレーニング種目があるそうだが、石井はそれを160から170キロの負荷でやってのけるという。
桑原氏は、全日本プロレスなどを指導していたこともあるが、「160、170キロのフルスクワットは、プロレスラーでもできない」と目を丸くしていた。
肉体強化には、集中してトレーニングのできるオフが特に重要で、石井は優勝した2023年のハワイへの優勝旅行も辞退して肉体のケアにあてている。
「石井選手は、“プロは結果がすべて。大事なのは再現性を高めること”といつも言っています。だからルーティングを大事にしているそうです。彼の場合はストイックではなく、もうライフスタイル。きっとプロ野球新記録を更新した後も、明日も、しっかりと抑えてチームに貢献できるか、と心配になり、万全の準備をしているんじゃないでしょうか」
あくまでも40試合連続無失点記録は通過点。石井はどれだけ記録を伸ばしてシーズンを終えるのだろうか。阪神の優勝マジックは「22」となった。