
なぜFC町田は破竹8連勝で10位から暫定首位へ浮上できたのか?「落とした試合が数多くあっても自分たちに疑いを持たない」
後半戦に入るとともに怪我人や不調の選手が続々と復帰してきた。
たとえば身長188cm・体重80kgの菊池は、左右の太もも裏の肉離れを繰り返した前半戦は出場わずか2試合にとどまった。一転して6月の鹿島戦で復帰すると、3バックの中央でエアバトラーを自負する高さと強さを発揮。左に昌子、右に岡村大八(28)と開幕前のキャンプから準備してきた布陣が堅守の源泉になった。
さらに3バックへの移行とともに1トップとなり、韓国代表のオ・セフン(26)や豪州代表のミッチェル・デューク(34)にポジションを奪われ、精彩を欠いていたパリ五輪代表の藤尾翔太(24)も後半戦から1トップの先発を奪取。前戦から精力的にプレスをかけ続ける献身的な動きで、中盤や最終ラインの守備を大きく助けている。
藤尾は京都産業大学に逆転勝ちした6月の天皇杯2回戦で、後半終了間際に同点ゴールを決める活躍を演じた。復調しつつあると見抜くとともに、母国代表としてW杯アジア最終予選を戦った直後だったオ・セフンやデュークよりも、コンディションが良好だと判断した黒田監督のチームマネジメントも見逃せない。
セレッソ大阪に快勝した前節は菊池が体調不良で欠場し、ガンバ戦では攻撃の中心を担っていた元日本代表のFW相馬勇紀(28)が累積警告で出場停止となった。それでも菊池の穴をドレシェビッチ(28)が埋めれば、相馬に代わって3試合ぶりに出場した西村が遜色ないプレーを披露した好循環に、昌子も思わず目を細める。
「正直、何の心配もありませんでした。チームの勢いそのままに、たとえば(西村)拓真はたまっていたものを発散するかのように目が血走っていましたからね。(菊池)流帆がいないから負けたとか、相馬がいないから点を取れないというのは、僕たち選手にしてみればあまり言われたくないフレーズでもある。チームとして勝ってきた、というのを証明したかった、という思いはみんなにありました」
昨シーズンは5月中旬から3カ月あまりにわたって首位をキープしながら、高温多湿の夏場以降に失速して3位でフィニッシュした。最終的に優勝したのはヴィッセル神戸だったが、町田の脅威となったのは夏場に怒涛の7連勝をマークし、一時は勝ち点で12ポイントも引き離した状況から上回られたサンフレッチェ広島だった。
迎えた今シーズン。広島の強さを身にまとおう、が合言葉になったと昌子は言う。
「本当に強いチームは、どれだけ苦しくても自分たちに矢印を向けて上がってくる。広島さんの強さを一番感じたのが僕たちだし、だからこそ広島さんのように夏場にしっかりと勝ち点を稼ごう、もう一度優勝争いをしよう、という強い気持ちを抱いてきました。その意味で、非常にいい方向に進んでいると思っています」