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来春のWBCの日本国内放送はネットフリックスが独占配信
来春のWBCの日本国内放送はネットフリックスが独占配信

放映権料は50億円超えか?!なぜ来春WBCの地上波放映がなくなりネットフリックスの独占配信となったのか…「時代に乗り遅れた日本のビジネススタイル」SNSは「残念」「寂しい」の声で荒れる

  

 ネットフリックスは、昨年11月に初めて米国でボクシングのライブ配信を行ったが選択したのは、58歳になる元ヘビー級の3団体統一王者、マイク・タイソン(米国)vsユーチューバー格闘家のジェイク・ポール(米国)という“ゲテモノカード”だった。だが、話題性は抜群で1億人を超える視聴があったとされる、そこで味をしめたのか、9月13日に米国ラスベガスのアレジアントスタジアムで行われる、スーパミドル級の4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)と元2階級4団体統一王者のテレンス・クロフォード(米国)のビックマッチの配信もネットフリックスが行う。主催はサウジアラビアの「リヤドシーズン」がバックにいるTKOグループで、これまで「リヤドシーズン」はDAZNで放映されていたが、ネットフリックスに変わったのは、よほどの高額条件だったとされる。
 多くの視聴が期待できるコンテンツに惜しむことなく金をつぎ込む社風からいくと、2023年の前大会の決勝戦がテレビ朝日の地上波で平均世帯視聴率が42.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークして、全国民の75%が見たとされるWBCに、50億円以上の資金を投入したのも当然の選択だったのかもしれない。
 ただネットフリックスは、国内のファンの反感を買ったことに危機感を覚え、「ファンの皆さまに、これまでにない視聴スタイルを提供し、選手や大会の魅力をより身近に感じていただきたいと考えています。また、日本のさまざまなパートナーと力を合わせ、野球の魅力を広め、ワールドベースボールクラシックを、日本中がさらに熱狂する大会へと盛り上げていくことを目指します」などのコメントを発表した。だが、ネットフリックスが“悪者”というわけではない。
 放送及び配信権を売り渡したのは、WBCI、すなわちメジャーリーグなのだ。そもそもWBCが始まった際には、世界規模での野球の復興がビジョンとしてあったはず。その理念に従えば、普段は野球を見ないライト層へリーチできる地上波放送は必須だったはずだが、今回はその理念よりもビジネスが優先されたということだろう。彼らからすれば、地上波を確保したいのであれば「もっと金を出せ!」ということなのかもしれない。
 元テレビ大阪報道スポーツ局長で、現在、大阪経済大学、芦屋大で非常勤講師を務め、メディアの問題に詳しい山形真一郎氏は「日本はワールドワイドな権利ビジネスへの対応が立ち遅れている」と指摘した。
「メジャーリーグやNFL、プレミアリーグなど海外のプロスポーツは、リーグがグロスで放送権をとりまとめて大きな契約をまとめるのが主流。一方の日本は、Jリーグは機構でとりまとめてDAZNと契約をしたが、NBPはいまだにそれができずに各球団との個別交渉という形になっている。今回はWBCIを相手にした交渉。高騰している放映権料にスポンサー料で支えられている民放が一社二社で応じるのは難しく、独占にこだわらないネット配信会社と組んで権利を取りにいくような新たなスタイルのコンソーシアムを作って対抗しなければならなかったと思う。前大会は、地上波とAmazonプライムビデオの同時中継で、年代や環境に合わせて、テレビか、スマホかで観戦スタイルの棲み分けができて、ライト層にまで視聴が拡大した。だが、結果的に今の時代の放映権ビジネスに対応できる組織も取り組みもできていない日本の現状が、今回の地上波無しの結果を招いたのでしょう」

 

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