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WBCの前大会では優勝した米国代表で出場した”大物メジャーリーガー”イエリッチの日本代表入りプランが浮上(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
WBCの前大会では優勝した米国代表で出場した”大物メジャーリーガー”イエリッチの日本代表入りプランが浮上(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

侍ジャパンにメジャー“MVP男”イエリッチ招集プランが浮上…その背景とは?

 来年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にエンゼルスの大谷翔平(28)、パドレスのダルビッシュ有(36)、カブスの鈴木誠也(28)が次々と出場表明を行い、最強の侍ジャパンの陣容が整いつつあるが、ここにきて、2018年のナ・リーグMVPのブルワーズ、クリスチャン・イエリッチ(31)の日本代表入りというサプライズプランが浮上してきた。なぜなのか?その背景と可能性を探った。

 「WBCに日本代表として出られないか」

 

 当時マーリンズのイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が、3000本安打達成にあとわずかと迫っていた2016年夏のこと。
 クラブハウスで、当時同じチームにいたイエリッチと雑談をしていると、「WBCに日本代表として出られないかなぁ」と相談された。

 どういうこと?

「WBCでプレーしたいけど、米国代表は、(ジャンカルロ・)スタントン、(マイク・)トラウト、(ブライス・)ハーパー、(アンドリュー・)マカッチェンらが出るみたいだから、もう外野手の枠はない。でも自分は、(母方の)おばあちゃんが日本人だから、日本代表でプレーする資格があるんじゃないかな、と思って」

 厳密に言えば、両親のどちらかが日本人ならば大丈夫だが、祖父母では有資格とはならない。ただ、WBCの規定はオリンピックなどと比べてそれほど厳格ではなく、イエリッチが自分のルーツに触れてみたいと訴えたり、日本側が異文化交流を野球を通して図るためーーそんな理由をつけて打診すれば、ひょっとしたら、という可能性はあった。それによって注目が増し、盛り上がるならーー。所詮はエンターテインメントビジネスなのである。

 ちょうどその頃、侍ジャパンの打撃コーチだった稲葉篤紀氏(現日本ハムGM)が、取材でマイアミを訪れており、「挨拶だけでもする?」とイエリッチに聞くと、「ぜひ!」と目を輝かせた。
 たまたま、稲葉氏と同じホテルに宿泊していたので、ロビーで会ったときに一連の経緯を伝えると、「僕に選手を選ぶ権限なんてないですよ」と笑ったが、挨拶を拒否する理由などない。試合前、稲葉氏がフィールドにいるときを見計らって、クラブハウスにいたイエリッチに声をかけると、「じゃあ、行く」と小躍りで外へ向かった。

 果たして実際に対面し、イエリッチが「いつまでこちらにいらっしゃるんですか?」と聞くと、「イチロー選手が3000本安打を打つまで」と稲葉氏。「Me too!(僕も!)」とイエリッチが応えると場が和んだが、最後に「よろしくお願いします」と、存在をアピールした。
 もっともその7か月後、イエリッチはU.S.A.のユニホームを身にまとい、日本とのWBCでの準決勝では先制のホームを踏んでいる。
 大会が終わり、フロリダのキャンプ地に戻ってからイエリッチに経緯を聞くと、「だって、日本から連絡がなかったし、トラウトたちが出なかったから、繰り上がりで声がかかった」と苦笑い。そのやり取りを横で聞いていたスタントン(現ヤンキース)が、「お前、日本代表で出ようとしていたのか?」と驚いていたが、いずれにしても過去にそんなことがあった。

 

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