
「井上尚弥のようなボクシングができるかも」WBO王者の武居由樹が9.14名古屋で那須川天心の元スパー相手メディナを迎え討つ…無謀に殴り合えば危険なランキング1位の指名挑戦者だ
プロボクシングのWBO世界バンタム級王者の武居由樹(29、大橋)が3日、9月14日に名古屋で同級1位のクリスチャン・メディナ(25、メキシコ)を迎え討つV3戦に向けての公開練習を行った。メディナは至近距離での殴り合いを得意とするメキシカンファイターで武居のライバル、那須川天心(27、帝拳)の元スパーリングパートナー。参謀の元3階級制覇王者の八重樫東トレーナー(42)は同日にメインで戦うスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)に重ねて「尚弥のような打たせず打つボクシングができるかも」との秘策を明かした。
仕上がりは150%
偉大なるジムの大先輩にあやかった。
「あと11日。仕上がりは過去いち。150%です」
「過去いち」は井上尚弥の常套句。
武居は真っ黒に日焼けした顔から白い歯をのぞかせた。
ユッタポン・トンディ(タイ)を1ラウンドTKOで沈めてインパクトを残した5月28日の前戦は、ほぼ無傷で終えたためすぐに練習を再開した。8月には富士で走り込み合宿を張り、ここまで吉田京太郎(ワタナベ)に若手ホープの西岡伶英(川崎新田)、小山涼介(金子)ら「メディナにファイトスタイルの似た選手」(八重樫トレーナー)とスパーリングを重ねてきた。1月24日に予定していたV2戦を5月28日に延期する原因となった右肩の怪我は、前戦では「若干、不安が残っていた」が完治した。
150%の仕上がりは誇張ではない。
9.14名古屋IGアリーナでメインを張る井上尚弥は、最強の挑戦者を迎え討つが、セミファイナルに登場する武居もV3戦でランキング1位の”難敵”との指名試合が組まれた。
メディナは2年前にIBF世界バンタム級挑戦者決定戦で西田凌佑(六島)に判定負けを喫したが、再起後は、すべてTKO勝利で4連勝。しかも、その間、武居が対戦を熱望する天心のスパーリングパートナーを3度務めた。
天心は「一筋縄ではいかない。武居選手の遠い距離がどれだけ通用するか。メキシカンは、スパーではより強い。ガンガン前に来るから最初は苦戦した。今までやった中で一番強いパートナー」とメディナを高く評価していた。メディナは天心を相手にサウスポーの経験を積んだことになる。
武居にも死闘となる覚悟はできている。
「ガンガン前に出てきて、パワーがあり、フィジカルの強いタフな選手。きつい試合になると今から覚悟している」としながらも「バチっと倒したい」と力強く言い切った。
「(キック時代に所属していたPODジムの)古川会長からは中盤くらいからと言われていますが、言うことを聞かず、序盤から倒しにいくつもりでいきます」
気合十分。
「自分の距離で戦えたらベスト。それでも詰めてくる展開になれば覚悟を決めて殴り合いたい」
武居は勇ましかったが、殴り合いの展開になればメディナの思うツボだ。
メディナは至近距離での打撃戦が得意のメキシカンファイター。西田戦では長身サウスポーの西田の懐に入ることができず、空回りさせられた。武居はアウトボクサーの西田とはスタイルが違うが、同じ長身サウスポー。インファイトに巻き込みにくいサウスポーが苦手の挑戦者と、わざわざ殴り合うのはマイナスでしかない。
会見でその点を聞くと武居も「マイナスですね」と認めた。